資産運用を始めるときに気をつけるべきことはなにか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「定期預金と投資信託を同時に契約する『セット商品』には注意したほうがいい。お得に見えて、実は投資信託の手数料が高いことがある」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

積み重ねられた硬貨を守るように手で覆っている
写真=iStock.com/Nastco
※写真はイメージです

「銀行に置いておくなら、金利のいいセット商品に」

低金利が続き、賃金も上がらない昨今、「つみたてNISA」をはじめとした資産運用でコツコツお金を育てている方は少なくないはず。今回ご紹介するのは、「口座に置いているだけじゃもったいない」と感じたある公務員が、高金利の定期預金と投資信託の「セット商品」を契約した際にハマった落とし穴です。

「今月から中山さまの担当になりました、○○銀行の△△です」

はじまりは数年前。公務員の中山裕さん(仮名/38歳)のもとにメガバンクの行員からかかってきた電話でした。その時は夏のボーナスが支給された直後で、中山さんの口座には1000万円ほどの貯金がありました。公務員として毎月安定した収入がある上に、仕事の忙しさと堅実な性格で無駄遣いをしないまま10年以上ほったらかしにしていたら「自然と貯金できていた」と言います。

そこで銀行から提案されたのが、「投資信託と定期預金のセット商品」でした。中山さんは、「定期預金の金利が最初の3カ月間3%になる」という行員の言葉に反応。「同じ銀行に置いておくだけなら、金利のいいセット商品にしたほうがいいかな」と思い、定期預金300万円、投資信託300万円でセット商品の申し込みをしました。

投資信託の手数料・信託報酬が高すぎて損をしている

そして数年後。あるセミナーでご一緒したことが縁で中山さんの資産状況を拝見したとき、「投資信託と定期預金のセット商品」を購入していると聞き、嫌な予感がしました。そこでデータを見ると、3年で実質10万円程度しか資産が増えていなかったのです。もちろん、相場の状況等によっても違うとは思いますが、定期預金の金利が3%で、しかも投資信託にも投資しているはずなのに、なぜこんなことになるのでしょうか?

今、メガバンクの普通預金金利は0.001%。ここから税引きされるので、100万円を1年間預けても10円にもなりません。そんな低金利の中で中山さんがおすすめされた商品は金利3%。通常金利の300倍で、100万円を3カ月預けた場合、利息は7500円になります。ただ、やはりここから利子税が引かれるので、実際に手元に残るのは6000円、300万円の場合は1万8000円になります。

そして何よりこの商品の大きな問題が、「セット」ゆえ、投資信託も購入している点です。高い利率を謳ったセット商品の場合、抱き合わせになるのは往々にして、手数料・信託報酬が非常に高い商品。中山さんの場合もご多分に漏れず、購入手数料3%という投資信託がセットになっていました。すると、100万円に対して手数料だけで3万円取られる上、さらに信託報酬が年率2%なので、初年度は経費だけで5%。つまり、100万円を預けてもその時点で資産は95万円に減っているのです。お伝えしたとおり、定期預金は最初の3カ月だけの高金利のため、儲けは6000円のみ。これだけでも、まったく得をしていないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。