※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
「“教育”は泥棒に盗まれない唯一の財産」と聞いたことがあります。子どもの教育にお金をかけることはブランド品にお金を使うより、なんとなく「善い使い道」な気がしますよね。しかし、その教育費によって世帯年収1000万円の家庭が崩壊寸前になっていたのです……。
引っ越し先で「マズい」と感じた教育事情
同級生同士で結婚した松原さん夫妻は33歳の時、長男の小学校入学前にマイホームを購入しました。横浜駅から数駅いったところにあり、夫婦ともに通勤のしやすさから選んだ場所です。
購入価格は5500万円。頭金として1500万円をおさめ、残りの4000万円を35年ローンで返済していく計画です。
修繕積立金含め、家にかかるお金は毎月13万円。メーカー勤務の夫は当時年収600万円、インターネット関連会社に勤める妻は年収400万円だったので、世帯年収1000万円家庭の返済金額としては妥当なラインです。
そんな堅実な返済計画を進めていた松原夫妻が私の元にやってきたのはそれから4年後のこと。「うち、このままだとマズい気がして……」と切り出した妻・麻子さん(仮名)が語ったのは、引越し後にわかった地域の「教育事情」でした。
長男が友達に誘われて塾通いを開始
先ほど申し上げたように、松原さん一家が横浜駅近辺に家を持ったのは通勤の便を考えてのことで、それ以外にこれといった理由はありませんでした。しかし、実は彼らが家を持ったその一帯は、非常に教育熱心な家庭が集まる「お受験激戦区」だったのです。
長男が小学校4年生になるとこれまで学童などで放課後を一緒に過ごしていた同級生たちが一斉に塾通いを始め、松原さんの息子さんも「塾に一緒においでよ」と声をかけられるように。そこで、たまたま友達について行った塾で先生に進められるがまま受けたテストでハイスコアを叩き出したところから、お子さんのやる気にも火がつきます。
松原さんは夫婦ともに地方の公立中学校・高校の出身ということもあり、中学受験を考えたことはありませんでした。しかし、思いがけず子どもが成績優秀だったことや、本人もやる気になっていることから塾通いを始めたのです。