海外投資家が買いを演出している
5月22日、日経平均株価は前週末比278円47銭(0.90%)高い3万1086円82銭で取引を終了した。1990年7月26日の3万1369円75銭以来、約33年ぶりの高値だ。ここへきて株価上昇を演出しているのは海外投資家の買いだ。
海外投資家が日本株を見直す背景には、いくつかの要因がある。まず、日本株がこれまで安値に放置されていたことだ。少なくとも過去数年間、海外投資家は日本株にほとんど目もくれなかった。そのため、日本株は安値に放置されてきた。次に日銀による異次元の金融緩和が当面続くとみられることだ。金融緩和策は株式市場には重要なプラス材料だ。
また、台湾問題をはじめ地政学リスクも高まっている。とりあえず、日本には差し当たった地政学的リスクは見られない。さらに3月末、東京証券取引所が、株価純資産倍率(PBR)が1を下回る上場企業に改善策を開示し、実行するよう求めたことも大きい。
今後の日本株の展開は、なんといっても海外投資家の行動につきる。短期目線で取引する投資家は、一定の利益が発生すれば保有する日本株を売る。一本調子で相場が上昇しつづける展開は考えにくい。中・長期的に海外投資家が日本株を買うためには、わが国企業の成長戦略が問われる。
一部で成長に向けた取り組みを強化する企業はあるものの、今のところ、わが国経済全体でみるとそうした企業は一部にとどまる。海外投資家にとって、中長期的にわが国の企業業績が拡大し株価が上昇する展開は描きづらいだろう。
欧米の金融機関の破綻を契機に買いが加速
4月上旬以降から5月中旬まで、海外の投資家はわが国の大型株を積極的に購入した。3月末から5月22日までの間、日経平均株価は10.9%、TOPIXは8.6%上昇した。世界全体の株式市場の平均的な上昇率は2%だった〔MSCIオールカントリーインデックス(米ドル換算)の騰落率〕。かなりの資金が日本株式市場に振り向けられたことが窺える。
日本取引所グループが公表する、“東証プライム”市場の投資部門別株式売買状況によると、3月27日の週以降、東証プライム市場において海外投資家の買いは急速に増加した。3月10日、米国ではシリコンバレーバンクが破綻し、19日にはクレディスイスも救済買収された。米欧金融機関の経営不安定化懸念を背景に世界的に株価は大きく下げた。その局面で一部の海外投資家は日本株に買いを入れ始めた。