“買うから上がる、上がるから買う”流れが鮮明に
4月10日の週、海外投資家による買い越し額は1兆487億9499億円に膨れ上がった。さらに大きかったのは、4月11日、バフェット氏が5大総合商社株を追加で取得し、他の日本企業への投資も前向きに検討していると報じられたことだ。東京都内でインタビューは行われた。バフェット氏が率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」が円建て社債を発行することも伝わった。
バフェット氏が日本を訪問するのは珍しい。わざわざ日本に赴いて総合商社トップと面会するからには、見逃せない投資のチャンスがありそうだ。“サムライ債”を発行するということは、日本の超緩和的な金融環境は続くと考えてよい。
そうした見方の増加とともに日本株を買う海外投資家は急増し、株価上昇の勢いは強まった。5月に入って以降は、東証プライム市場の一日当たりの売買代金は3兆円の大台を上回る日も増えた。海外投資家の買いにつられて国内の機関投資家や個人投資家も日本株を買った。
海外投資家による買いを起点に、日本株を“買うから上がる、上がるから買う”という相場の流れは鮮明化した。それは、行動ファイナンス理論にある“バンドワゴン効果(商店街を練り歩くチンドン屋のにぎやかな雰囲気に思わずついていく心理)”が高まった典型的なケースといえるだろう。
海外投資家が日本を狙う“最大の要素”
海外投資家が日本株を買った最大の要素は、割安さにある。株価純資産倍率(PBR)から確認できる。PBRは株価が、1株当たりの解散価値(バランスシートの資産総額から負債総額を差し引いた純資産の価額)の何倍かを示す。4月末、世界の平均的なPBRは2.63倍〔MSCIオールカントリーインデックス(米ドル換算)〕、日経平均株価は1.23倍だった。
バフェット氏が購入した一部総合商社のように、PBRが1を下回る銘柄も多い。株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを示す“株価収益率(PER)”でみても日本株には割安感がある。長期のデータに基づくと、日米などでPERは14~17倍が適正な水準といわれている。
5月19日、日経平均株価のPERは14.4倍。同日、米国のS&P500インデックスは18.82倍、ナスダック総合指数の上位100銘柄で構成されるナスダック100インデックスでは26.62倍だ。
わが国の超緩和的な金融政策も続くだろう。4月の日銀決定会合の『主な意見』によると“イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用を見直す必要はない”との見解が示された。短期のうちにYCCの追加修正、撤廃が実施される可能性は後退したと考えられる。