世界的な地政学リスクの高まり、東証の改革号令…

また、日銀は1年から1年半程度の時間をかけて、過去25年間の金融緩和を多角的にレビューしている。ある意味それは、今後の世界的な後退リスクに備えるための時間稼ぎに見える部分もある。

世界的な地政学リスクの高まりも大きい。台湾問題の緊迫化に加え、ウクライナ紛争がどう推移するかは見通しづらい。北朝鮮によるミサイル発射など朝鮮半島情勢も不安定だ。一方、わが国は米国との関係を基礎に安全保障体制を強化している。海外投資家にとって、地政学リスクから離れて資金を運用するためにも日本株の有用性は高いだろう。

さらに、東証は『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について』と題した資料を公表した。それによると、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の企業でROE(自己資本利益率)8%未満、PBR1倍割れが続いている。東証はそうした企業に成長に向けた計画を早期に策定、開示し、投資家と積極的に対話するよう求めている。国内企業による改革機運は高まる可能性がある。これらの要素を背景に、海外投資家は日本株を積極的に買い進めた。

画面上に表示された株式チャート
写真=iStock.com/da-kuk
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今後の株価は海外投資家次第で乱高下も

今後、日本株の推移は海外投資家に大きく左右される。投資家が想定する投資の期間はさまざまだ。長期で保有することを目的に株を買う人もいれば、短期目線で取引を行う者も多い。短期目線で日本株を買った海外勢は、株価が上昇して一定の利益が発生すると株を売るだろう。海外投資家から利益確定の売りが出れば、日本株上昇のトレンドはいったん終焉しゅうえんを迎える可能性が高い。そうなると、日本株の上値は抑えられやすくなる。

また、株価が上昇して割安感が薄れれば、海外からの買いは減少するはずだ。4月下旬以降、徐々に海外投資家による購入金額は減少している。5月23日の後場、日経平均株価は下げた。高値を警戒する海外投資家は増えていると考えられる。

中長期の目線で日本株の展開を考えると、重要なポイントはやはり日本企業の成長性だ。日本企業がいかに成長戦略を描き、実行し、業績拡大期待が高まるか否かだ。2022年度の決算を確認すると、半導体関連、総合商社など収益分野を拡大している企業は徐々に増えている。