TSMC、サムスンに続きウエスタン・デジタルも
最近、世界の有力半導体メーカーが、わが国に大規模な工場を建設するケースが増えている。世界最大のファウンドリである台湾積体電路製造(TSMC)や、DRAMなどのトップ企業である韓国のサムスン電子、米国のウエスタン・デジタルなどがその例だ。
こうした有力半導体メーカーが、わが国にやってくる背景にはいくつかの要因がある。まず、台湾問題の地政学リスクは重要だろう。戦略物資として重要性が高まる、半導体の安定供給体制を確立するため、台湾や韓国からわが国に生産拠点を急速にシフトしている。
また、わが国の超高純度の半導体部材や精密な半導体製造、検査装置メーカーの国際競争力も高い。有力メーカーにとって、原材料や部材を入手しやすい環境は有利だ。さらに、メーカーにとって、トヨタ自動車などの重要顧客が近くに位置することも見逃せない。
今後、わが国企業はこのチャンスを生かして、人材の育成、研究開発体制の強化を徹底し、世界から求められる素材や装置の供給力を引き上げることが必要だ。それができないと、有力メーカーの進出は一時的な現象で終わってしまう。日本経済にとっても、逃してはならない好機だ。
日韓関係の修復でサムスンは対日投資を積み増し
近年、台湾、韓国、米国の大手半導体メーカーが、わが国への投資を積み増している。2022年4月、熊本県で“ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)”が工場の建設に着手した。JASMは台湾のTSMCが株式の過半を所有し、経済産業省が工場建設を支援する。ソニーとデンソーもJASMに出資している。
2023年2月には熊本県などを念頭にTSMCが追加で工場の建設を検討しているとも報じられた。回路線幅5~10ナノメートル(ナノは10億分の1)など先端レベルのチップ生産も検討されているようだ。
TSMCを追いかけるように、韓国のサムスン電子もわが国での事業運営体制を強化しようとしている。5月14日、横浜市に韓国のサムスン電子は半導体の試作ラインを構築すると報じられた。鶴見区にある研究所に半導体の拠点を設け、2025年からの稼働が目指されているという。日韓の関係修復に歩調を合わせて、サムスン電子は対日投資を積み増そうとしているようだ。