ウエスタン・デジタル、インテルも続々
4月下旬、経済産業省は韓国の産業通商資源省と政策対話の場を持った。わが国は輸出優遇措置の対象である“グループA(旧ホワイト国)”に韓国を再度指定することを念頭に、韓国の貿易管理体制などを確認した。5月7日、ソウルで開催された日韓首脳会合にて両国は、韓国の半導体メーカーとわが国の半導体関連部材、半導体の製造、検査装置企業との連携を強化して供給網を強化することにも合意した。
米国企業も、わが国での事業運営体制を強化しようとしている。5月15日、米ウエスタン・デジタルは東芝の持分法適用会社であるキオクシアホールディングスとの合併協議を加速し、フラッシュメモリ事業の統合を目指すと報じられた。同日、ウエスタン・デジタルの株価は前営業日から11.26%上昇して引けた。2016年頃に回路線幅10ナノメートルの製造ライン立ち上げに行き詰まったインテルも、わが国への投資強化を検討しているという。
半導体有力メーカーが日本を目指す4つの理由
半導体大手企業による、対日直接投資積み増しの背景にはいくつかの要因がある。大きく4つの要素を考えると分かりやすい。まず、地政学リスクの高まりだ。支配体制の強化を目指す中国の習近平政権は、台湾への圧力を強めている。米軍関係者の間では台湾海峡で有事が発生するとの警戒感も高まっている。
台湾企業にとって、米国との関係を基礎に安全保障体制を強化するわが国は、地政学リスクの高まりから離れ、安定した事業運営体制を確立するために重要性が高まっている。朝鮮半島では、固体燃料エンジンを搭載した新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行うなど北朝鮮の軍事的挑発が増している。サムスン電子にとっても安定した研究開発体制の整備は急務だ。
2つ目は、わが国の半導体部材、製造、検査装置は世界的に競争力が高いことだ。例えば、わが国の企業は、“イレブン・ナイン(99.999999999%)”と呼ばれる、超高純度のフッ化水素を製造する技術を持つ。フォトレジスト(感光材)、基盤であるシリコンウエハなどの半導体部材の供給でもわが国企業の比較優位性は高い。