三大都市圏の一角が崩れる

ただ、休刊の理由が振るっている。「東海3県では朝刊だけを希望される方が増えており、朝刊のみをお届けすることにしました」という。休刊の原因を読者に転嫁しているようにもみえていただけない。

もっとも、「朝刊のみ読者」の増加は全国的傾向とされているため、近い将来、東京や大阪エリアでの夕刊についても、同様の理由で休刊することを示唆したとも受け取れる。

いずれにせよ、朝日新聞らしからぬ稚拙な表現と言わざるを得ない。

一方、日本経済新聞も、8月にも休刊するという話が伝わってくる。読売新聞は、もともと朝刊しか発行していないため、東海エリアでは全国紙の夕刊がまったく読めなくなりそうだ。

静岡県でも、地元有力紙の静岡新聞が3月末ですべての夕刊の発行を取り止めた。

東海エリアで最大手の中日新聞は「当面、休刊する予定はない」というものの、夕刊の販売部数の落ち込みは大きく、先行きには不透明感が漂う。

新聞用紙代の大幅値上げが引き金

引き金となったのは、製紙会社の新聞用紙代の大幅値上げだった。

ウクライナ戦争をきっかけにした資源価格の高騰などを理由に、22年秋に続いて、23年度納入分についても、値上げを「通告」。合わせて3割程度というかつてない規模の値上げを、新聞各社に迫っている。

製紙会社にとって、新聞用紙は特殊な用途であるため汎用はんよう性がなく、かねてから採算性が問題視されてきた。それでも、生産を続けてきたのは、新聞発行を支える社会的使命感によるところが大きいといわれる。だが、もはや背に腹は代えられなくなったのが実情のようだ。

新聞市場が急速にしぼみ、年々売り上げが落ちていく中、新聞各社の財務状況は厳しく、用紙代の値上げ分を吸収する余力は乏しい。社会的使命をまっとうしようとするプライドと誇りはあっても、損益分岐点を割ってまでも新聞の発行を続けることは難しい。

この20年で夕刊は66%減の記録的減少

新聞協会の調べによると、2002年から22年までの20年間で、全国紙や地方紙の総発行部数は4739万部から2869万部へ39%も落ちているが、夕刊に限ると1761万部から593万部へ66%減、1168万部が消滅するという。

日本ABC協会によると、1月現在の全国紙の夕刊販売部数は、読売新聞162万部、朝日新聞121万部、日経新聞72万部、毎日新聞54万部にまで落ち込んでいる(朝刊はそれぞれ、663万部、397万部、168万部、185万部=22年下期平均)。

それは、読者の「夕刊不要論」を反映したものと受け止めざるを得ない。