イーロン・マスク氏がAI開発の一時中断を求めた
イーロン・マスク氏が、ChatGPTの開発に「待った」を掛けようとしている。ロイターは4月5日、マスク氏がAI開発に反対の立場を表明していると報じた。
AI専門家などと共同発表した公開書簡のなかで、「行きすぎた人工知能(AI)の開発は危険」「社会への潜在的なリスクがある」と主張し、開発を今後6カ月間は一時中断するよう求めている。
TeslaやSpaceXを率いるマスク氏は、これまで新しい技術の開発・普及に一貫して積極的だった。さらにChatGPTを開発する米OpenAI社の共同創設者のひとりでもあった。AI開発にだけ反対の立場をとる氏の言動はあまりに不自然だろう。
ロイターや米インサイダーはマスク氏がOpenAI社を追い出された「苦い経験」を指摘。さらに自社でAIを開発するまでの引き延ばしを図るしたたかな戦略だという見方を示す。
標的は、世界が大注目するChatGPT
昨年11月のデビュー以来、ChatGPTの評判はうなぎ上りだ。これは、ユーザーが入力した質問に、自然な文章で、知りたいことを端的に答えてくれる対話型AIだ。
一方で、まるで人間が書いたような文章を生成するAIには慎重論も出ている。イタリアでは使用が一時禁止となり、アメリカや日本などでも学生の利用を禁止するところが出てきた。
マスク氏が外部顧問を務めるNPO「生命の未来研究所」(Future of Life Institute)も、慎重な立場を示している。公開書簡を通じ、最新版のGPT-4を超える先端AI開発を6カ月間中断するよう求めた。
ロイターは、書簡にはマスク氏のほか、Google系列のAI企業であるDeepMind社の研究者や大学教授など、識者1000人以上が署名したと報じている。米CNBCが4月6日に報じたところでは、署名は1万3500人に達したという。
フォーブス誌によると、この団体は2021年、マスク氏が創設したマスク財団からの資金提供を受けているという。