「即レス」は生産性や幸福度を低下させる

ただわたしは、最近では、「即レス」のデメリットを痛感することが増えてきました。

なにか仕事をしていて、Slackの通知がピコンという通知音ともに届きます。後回しにすればいいのでしょうが、「後回しにして忘れたらどうしよう」という不安もあり、つい仕事を中断してレスしてしまいます。

少しだけのやり取りでも、それまで取り組んでいた仕事の腰を折られ、また初めからエンジンをかけ直すことになることがほとんどです。「わたしはメール派だから大丈夫」という人も、即レスや頻回のメールで疲弊しますので、注意しましょう。

カナダ、ブリティッシュコロンビア大学の研究では、マルチタスクの原因になるメールチェックを一日3回に制限したところ、日々の緊張やストレスが和らぎ、幸福感が向上しました。一方、制限なくメールチェックをしたところ、ストレスが増加し、生産性や幸福度も下がってしまいました。SNSやビジネスチャットだけでなく、メールでもレスに追われるのは、メンタルヘルスによくないようです。

「即レス」至上主義、あるいは「即レスしないと不安」という即レス強迫症は、集中力が続かない原因となり、結果的に能率を落としていることが少なくないのです。

自宅で仕事をするために困っている私服日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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スタンプを返すだけでも印象は違う

即レスは大事だけれども、デメリットもある……どうしたらいいのでしょうか。

先にお話ししたとおり、ビジネスチャットは、迅速な情報のやり取りが重要になってきます。即レス自体が目的になってしまい、相手が望む情報を提供していないやり取りになっていないか、相手の立場になって考えてみる必要があります。

ビジネスチャットにおける即レスの心理的重要性は、相手を不安にさせないことに尽きます。相手を不安にさせなければ、即レスにこだわらなくてもよいのです。具体的には、即レスが難しければ、いつまでに連絡する、といったことだけでも伝えておきましょう。手が離せない、メッセージ内容を考えるのに時間がかかりそうなときは、どんな笑顔アイコンでもいいので、リアクションスタンプだけでも押しましょう。

特にSlackでは、リアクションスタンプを押すことが重要です。SlackはLINEと違って、相手からのメッセージを読んだだけでは、相手に既読かどうかが伝わりません。Slackでは、まず読んだらリアクションスタンプを必ず押すという習慣を、参加メンバーで共有しておく必要があります。

「即レスしないと忘れてしまう」という不安も、即レスにこだわる動機の一つです。Slackでは、新規メッセージが入ってくると、古いメッセージはどんどん上にスライドしてしまうので、必要な情報をあとから探すのが大変です。レス忘れが、必然的に生じやすくなっています。