旧NHK党(現・政治家女子48党)の代表権をめぐり、立花孝志氏と大津綾香氏の間で争いが起きている。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「党首の座を奪い合う泥仕合の内実は、年間3億円超の政党助成金の争奪戦だ。私たちの税金を内輪で分捕りあう政党のあり方そのものを問い直すべきではないか」という――。
辞任の意向を表明したNHK党の立花孝志党首。右は新党首の大津綾香氏=2023年3月8日、東京・永田町の参院議員会館
写真=時事通信フォト
辞任の意向を表明したNHK党の立花孝志党首。右は新党首の大津綾香氏=2023年3月8日、東京・永田町の参院議員会館

3億円超の政党助成金をめぐる旧NHK党の泥仕合

このまま目を塞いでおきたい出来事だったが、ついに編集者から執筆依頼が来てしまった。「NHK党」改め「政治家女子48党」の党首争奪をめぐる泥仕合のことである。

昨年夏の参院選比例代表で旧NHK党から当選したガーシー参院議員が一度も国会に登院せずに除名された問題をめぐり、立花孝志党首が辞任を表明したのが3月8日。政党名を「政治家女子48党」を変更したうえ、大津綾香氏という政界では無名の30歳女性に党首を譲るといきなり発表したのだった。

大津氏は政治経験がなく、今年1月にユーチューブで「政治家女子48党」の候補者募集を知って応募し、4月23日投開票の目黒区議選への擁立が決まったばかり。その名を知る人は政界でもほとんどいなかった。

ただし彼女にはとっておきの経歴があった。幼少期に子役として活動し、世論形成に影響力のあったNHKの「週刊こどもニュース」に池上彰氏の娘役として出演していたのである。

立花氏はNHKを退職した後、受信料不払い運動を皮切りに世間を騒然とさせるパフォーマンスを次々に繰り出してインターネット上の話題をさらい、国政政党まで作り上げた。決して立ち止まることなくネタを取っかえ引っかえしてメディア露出度をつないできた彼の目に、大津氏の経歴が輝いてみえたのは想像に難くない。

「創始者(立花氏)」と「池上彰氏の娘役(大津氏)」の党首争奪戦

仲良く並んで党首交代の記者会見に臨んだふたり。1カ月も経たぬうちに立花氏が大津氏を「除名処分」して自らの党首復帰を宣言し、大津氏は「われこそ党首」と譲らずに党資金には不透明な流れがあると告発する内紛に発展するとは、さすがにどちらも予想していなかっただろう。