国会の権威を貶めたガーシー氏への罰

「ガーシー」こと東谷義和氏が、国会議員として72年ぶりとなる「除名処分」になった。

参院本会議で除名処分後、外されたガーシー(本名・東谷義和)議員の氏名標=2023年3月15日午前、国会内
写真=時事通信フォト
参院本会議で除名処分後、外されたガーシー(本名・東谷義和)議員の氏名標=2023年3月15日午前、国会内

理由は報道されているように、「トルコから帰国して登院する」という約束を破ったからだが、本質的なところでは、「国会の権威を貶めた」ということに尽きる。それは今回の処分を決めた参院懲罰委員会の鈴木宗男懲罰委員長の発言からも明らかだ。

「約束が実行されなかったことは極めて残念だし、遺憾であります。同時に政治不信を招く最たるものとなりますので、ここは院の権威を守るうえでもですね、しっかりと対応していかなければいけない」(テレ朝news 3月8日)

これをわれわれ一般庶民の言葉に翻訳すれば、「これ以上ナメられないようにガツンとやっちゃいますね」ということだ。ガーシー氏のようにルールに従わない人間を調子に乗らせてしまうと、議会の権威も地に堕ちて、「どうせ誰に投票しても一緒でしょ」という国民の政治不信に拍車がかかってしまうので、ここらでビシッと政治から追放しておこう、というわけだ。

気持ちはよくわかる。実際、ネットやSNSでも「当然だ。遅すぎたくらいだ」と処分を支持する声が多い。ただ、もし本当に政治不信を招きたくないのならば、ガーシー氏の議員資格剝奪は逆効果だ。むしろ、無党派層、特に若い有権者たちが今回の処分にシラけて、政治不信に拍車がかかってしまうだろう。

「変化」を望んだ民意を握り潰すことになる

なぜそんなことが言えるのかというと理由は主に2つある。まずひとつ目は、議会の権威を守れだ何だと偉そうなことを言っておきながらも、「民意」というものを思いのほか軽く扱っているからだ。

ガーシー氏のことを快く思っていない人からすれば「そもそもなんであんなのが当選したんだ」と腹を立てているだろうが、実はガーシー氏は「国会に出席しません」という公約を掲げて、約28万7000票というかなりの支持を得て当選している。

もちろん、ふざけて入れた人もたくさんいるだろう。が、「既存の政治」に何も期待できないということで、「変化」を望んで票を投じた人もたくさんいる。ガーシー氏の議員生命を奪うということは、これだけの民意を握り潰すことだ。「議会の権威を守る」にしても、もうちょっと慎重になるべきだ。