ガーシー氏が退場した後、日本の政治はどうなるか

では、そこで気になるのは、ガーシー氏の除名処分によって、日本の政治はどう変わっていくかだろう。今回の一件で、「選挙くらいでは日本の政治は何も変わらない」ということがより明らかになったので、これから投票率はガクンと下がる。

そして、そういうふうに社会が無力感に包まれた時というのは、「強いリーダーシップ」や「極端な政策を掲げるトリックスター」が誕生しやすい。わかりやすいのは、イタリアだ。

実はかの国は、日本とよく似ていて、ヨーロッパの中でも世襲政治家が多いことで知られている。なので、日本と同様に、政治不信が長年問題となっていた。だから、ガーシー氏のような型破りな人物に既存の政治を壊してほしいという「民意」がたびたび高まる。わかりやすいのは、ポルノ女優から政治家になったチチョリーナさんだろう。

多様な人々の投票する手元
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過去最低の投票率で極右政党が躍進したイタリア

さて、そんなイタリア、いよいよ政治不信がのっぴきならないところまできて昨年9月の総選挙では、ついに日本のように投票率の低さが問題になってきた。

「今回の選挙の投票率は4年前の73%に対し64%にとどまり、歴史的に投票率が高いイタリアでは記録的な低さとなった」(ロイター 22年9月26日

では、そこでどんな政党が支持されたのかというと、極右の「イタリアの同胞」だ。ここを率いるジョルジャ・メローニ氏が首相になった。彼女は女性でありながらも、ジェンダー平等を唱えないゴリゴリの保守で、対立政党からは「独裁者ムッソリーニの信奉者」「同性愛者の敵」「反移民の差別主義者」(日本経済新聞 22年10月24日)と批判されている。

よその国のことなどどうでもいいと思うかもしれない。が、日本とよく似た世襲政治国家で、同じく政治不信が深刻な先進国で、投票率過去最低になったら「第2次大戦以降初めて極右政党が第1党になった」というのは注目すべき現象だ。