小売・旅館・飲食ではむしろ雇用の大半を占めている

もちろん、パートなど非正規の働き方をあえて選択している人たちもいる。一定の年収を超えると社会保障などの負担が増す「年収の壁」を嫌ったり、休みが取りやすかったり、重い責任が伴わないことをむしろメリットとして働いている人が子育て層などに少なくない。

日本でパートや派遣社員など「非正規雇用」が大きく拡大した背景には、経済成長が止まり、デフレの色彩が強まる中で、企業の多くが、販売価格を抑えるために、コストである人件費を圧縮しようとしてきたことが大きい。

本来、雇用は正社員が中心で、パートなどの非正規雇用は補完的な役割とされてきたが、小売店や旅館・ホテル、飲食店などではむしろパートが雇用の大半を占めるケースが増えている。

一方で、働く側も本来のパートタイム=短時間勤務ではなく、フルタイムを「パート」の待遇で働いている人も増えた。企業としては人件費総額を抑えることにつながったものの、一方で、生活給としては十分ではない困窮世帯が増えることにつながっているという指摘もある。

人件費の増大分は「販売価格」に転嫁するしかない

もっともここへ来てイオンなどがパートの待遇改善に踏み切った背景には、深刻な人手不足がある。

ここ10年ほど増えていた高齢者や女性の労働力に頭打ちの気配が見えているうえに、出生率の低下による若年層の著しい人口減少が加わり、アルバイトなどが十分に雇用できなくなりつつある。

大手スーパーなどでは売り場のレジを無人化するなどの対応も急いできたが、今後、少子化の影響がさらに出てくることが明らかで、中長期にわたって人材をどう確保していくかが焦点になっている。そうした中で、パートの中でも有能な人材により責任の重い仕事を任せるなど、「戦力化」を進める必要性に迫られている。

岸田文雄内閣が「インフレ率を上回る賃上げ」を求めていることもあり、大手企業を中心に賃上げに踏み切っている。

最低賃金が毎年引き揚げられていることもあり、パートの時給も上昇しているが、まだまだ正規雇用に比べて給与格差は大きい。一方で、パートに依存している企業が、仮に正社員並みの給与をパート全員に払おうとした場合、人件費が激増して、赤字に転落することになりかねない。人件費の増加分を賄うためには販売価格への転嫁が必要で、企業は価格引き上げによってさらに利益をあげる体制への転換が求められる。