コスト削減のために「非正規化」されてきた

総務省が発表した1月の労働力調査によると、働いている人、つまり就業者の総数は6689万人。このうち、6034万人が企業などに「雇用」されている。その雇用者のうち37.4%に当たる2133万人がパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用だ。働く人全体の3分の1弱は非正規ということになる。しかも、37.4%という非正規雇用の割合は2013年1月には33.1%だった。新型コロナウイルスの蔓延で非正規雇用が減っていたが、ここへきて再び増加している。

前述のようにパートなどの「非正規」がひとつの「働き方」として定着し、選ばれている面もあるが、本来ならば「正規」で雇うべき雇用が、コスト削減のために「非正規化」されている部分も少なからずあると見ていいだろう。

その部分を「適正化」する意味で、「同一労働同一賃金」の規定が一定の役割を果たし始めたと言えるかもしれない。これをさらに進めていくには、一定時間以上働くと社会保障費負担が増えてしまうことから労働時間を削減しているとされる「年収の壁」を取り除くことだろう。

閣議に臨む岸田文雄首相=2023年3月28日午前、首相官邸
写真=時事通信フォト
閣議に臨む岸田文雄首相=2023年3月28日午前、首相官邸

1時間でも働けば社会保険を負担する仕組みに変える

ポイントは一定時間以上働いた場合に社会保険の適用とするのではなく、1時間でも働けば社会保険を負担する仕組みに変えることだ。

実は、「年収の壁」は働く側の意識ばかりが強調されるが、使う側の企業の事情も影響していると言える。つまり、一定時間以上働かせて社会保険適用となると、健康保険料などを働き手が負担する必要が生じるとともに、雇用者側が半額負担することが求められる。つまり、社会保険適用にならない時間数だけ働いてもらうほうが企業にとっても人件費負担を抑える効果があるということになるわけだ。

かつて、労働力が有り余っている時代は、社会保険料が免除される短時間労働の働き方を設けることが、働き手、企業双方にとってのインセンティブだったと言える。絶対的な雇用数を増やすことにつながったからだ。だが、人手が足らなくなった現在は、この政策は意味を失っていると見ていい。