パート社員の待遇を正社員と同等に引き上げ

イオングループの中核企業で総合スーパーを展開するイオンリテールが、パート社員の待遇を正社員と均等にする制度を導入することを決めた。月120時間以上働き、昇格試験に合格した「正社員と同等」の仕事をしているパート社員を、「地域限定正社員」と同等の待遇にする。法改正で2020年から適用されている「同一労働同一賃金」を強く意識した改革であることは間違いない。

北海道札幌のイオン札幌店店
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イオングループの従業員数は2022年2月末で15万5465人だが、このほかに26万5198人の時給で働くパートがいる。もっともこの人数は1日8時間勤務に換算したもので、実際に採用している総数はさらに上回る。パート、アルバイトを最も雇用している日本企業のひとつである。

「同一労働同一賃金」は安倍晋三内閣時の2018年6月に成立した「働き方改革関連法」によって導入された。正社員と同一の仕事をしている非正規雇用の働き手について、正社員と同一の待遇、つまり給与水準だけでなく、賞与や手当てなども同一にしなければならない、と法律で定められた。

当時、「働き方改革」が大きな課題になっていた中で、長時間勤務の是正とともに、正社員と非正規雇用者の待遇の違いが格差を生んでいるとして、野党が強く批判していた。これを安倍内閣が法制化したものだ。

売り場責任者の9%をパート従業員が担っていた

この法律は、2020年から大企業を対象に施行が始まっており、企業側の対応が焦点になってきた。

もっとも「同一労働同一賃金」には抜け穴があると、かねて指摘されている。「正社員と同一」という条件を厳しく捉えると、正社員同等の責任や権限があるかどうかが基準になり、同じような仕事をしていたとしても、「同一」とは言えないという判断が成り立ってしまう。

イオンなど大手スーパーの場合、パート社員として雇用した主婦の中でも経験を積んで「売り場責任者」などとして働く人が増えている現実がある。本来は正社員が行う仕事をパートが行っているとも言え、さすがに「同一労働同一賃金」の適用は回避できないとの見方が広がっていた。

今回のイオンの制度もこうした売り場責任者などが対象で、すべてのパートが含まれるわけではない。ちなみに「リーダー」など売り場責任者の場合、関東圏のパート時給で16%(約180円)上がり、年収は2割増える見通しだという。報道によると、イオンリテールの350店舗の売り場責任者1万1000人のうち、9%がパートだという。