百寿者・日野原重明先生の「長生き上手」のコツ

百寿者ほど、肉を食べている――。

実際、少しぐらいコレステロール値が高くても、あるいは小太りであっても、「肉を食べてきた人がいちばん長生きする」。『長寿の嘘』で、柴田先生は、そういうデータをいくつも挙げています。

人間はもともと「肉食動物」です。

肉に含まれる成分が、「肉食動物」である人間の「健康長寿」に有効というのは、ある意味、うなずけます。実際、いくつになっても元気な人ほど肉が好きだし、ふだんの食生活にも肉料理を取り入れていることが多いものです。

たとえば、100歳を超えるまで、現役の医師として活躍し続けた日野原重明先生(享年105歳)。

生きかた上手』(ハルメク)などの著作でも知られる日野原先生ですが、週2回の肉料理を楽しんでいたことは有名な話です。

そもそも、わたしたち日本人も「肉食」の恩恵を受けているのです。

戦後数年までは世界でもトップレベルの短命国だったのに、現在では、世界一の長命国になっています。これは、戦後、「日本人の食生活が、肉を食べる食生活に変わった」ということと大いに関係があるのです。

「肉食」が日本人の免疫力、抵抗力を高めてくれたのです。

ステーキ
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健康数値の異常は医学界が決めた「正常値」の枠を外れているだけ

いくつになっても、心も体も元気な人には、意外な共通点があります。

中高年の頃から肉をよく食べていて、太り気味の人が多いのです。

私は、長い間、高齢者の患者さんと向き合ってきた中で、前々から、この事実に気がついていました。肉をよく食べて、太り気味の人は、血圧や血糖値が高めでも、エネルギッシュで若々しい人が多いのです。

この観察結果は、現在のいわゆる予防医学の見解とは、まったく異なります。

ただ、日本という国は、世界でも例を見ないくらい、健康診断の数値にこだわる国です。

中高年になって、健康診断の数値に「異常」が出ると、すぐ「要再検査」「要精密検査」の通知が来ます。

その大半が、コレステロール値、血圧、そして血糖値、あるいはメタボ健診の数値です。ただ「異常」とは言っても、私に言わせれば、医学界が決めた「正常値の枠内に収まらない数値」ということに過ぎません。

「要再検査」「要精密検査」の通知が来ると、その反応は2つのタイプに別れるようです。

1つは「まずいな。まずは食生活を変えて脂っこい食事は控えよう。場合によっては薬を飲んで数値を改善する必要もある」と深刻に受け止めるタイプ。

もう1つは、それとは逆に、「そうは言っても、こんなに調子いいし元気なんだから、気にしなくていいや」とのんびり構えるタイプです。

私は医者ですが、明らかに後者のタイプです。

健康数値が悪いのに、医者がなぜ、のんびりと構えていられるのでしょうか。

本稿で紹介するように、60代、70代の人生には、健康数値より大事なものがたくさんあることを知っているからです。

これまでは、どちらのタイプの人が、結果として健康で長生きできるかというデータはありませんでした。そこにデータを提供してくれたのが、前項で紹介した柴田先生だったのです。

柴田先生の研究結果は、まさに青天の霹靂でした。

どの健康数値でも、基準値より高い人たちのほうが、健康で長生きしていることがわかったのです。

これは少なくとも、肉を食べることが、健康長寿の妨げになるどころか、むしろ、心と体の健康を支えてくれるということを証明したわけです。

この事実は、先ほどの私自身の実感とも一致するので、大いに共感したことを覚えています。