2019年6月の「闇営業」報道によって、カラテカの入江慎也さんは芸能界を引退した。なぜ道を踏み外してしまったのか。自省録『信用』(新潮社)より、一部を抜粋してお届けする――。

名前も覚えてもらえず「矢部の相方の君」と呼ばれていた

人脈を武器にして仕事をいただくようになってから、相方の矢部(太郎)には「入江は変わった」と言われるようになっていた。

僕の変化を矢部は敏感に感じ取り、忠告もしてくれていた。でも、僕は矢部の忠告に対し、聞く耳をもたなかった。それどころか、矢部は新たな仕事を手にした僕に嫉妬しているんだとすら思っていた。

この頃が、矢部と一番話さなくなっていた時期だったと思う。

高校でも卒業してからも、矢部よりも僕のほうが目立っていた。「芸人になろう」と誘ったのも僕で、矢部はそんな僕についてきた形だった。いつも僕が中心にいる自信があった。

でも、芸人になってすぐ、それが単なる勘違いだと思い知らされた。

出会う先輩、オーディションでの番組スタッフ、皆、矢部しか見ていなかった。

背が小さくてガリガリで坊主頭で、緊張すると股間を握る相方。誰が見てもおもしろかった。

僕は一切いじられなかった。見てさえもらえなかった。

先輩に名前すら覚えてもらえなかった。「矢部の相方の君」と呼ばれていた。