今回イケアが重視したのが、地元在住者の採用と育成だった。12年3月まで入社が続き、480人中、400人が新メンバーとなった。

イケアには、世界中で新店舗を開業してきた経験から得たノウハウがある。そのフォーマットを導入しつつ、細かい部分の最適解を従業員に考えさせる。

そんな従業員にとって行動指針となるのが、創業者のイングヴァル・カンプラード氏(85歳)が記したバイブルだ。

「ある家具商人の言葉(The Testament of a Furniture Dealer)」と名づけたもので、基本理念には「より快適な毎日を、より多くの方々に」を掲げている。意訳すると「多くの人が自宅で快適に過ごせるように、低価格の家具を大量に生産して提供する」という意味だ。

理念を実現するための9カ条もあり、全従業員に配布されている。いわば社員手帳に当たるが、こうした成文法を踏まえつつ、現場では「イケアバリュー」と呼ばれる価値観の共有が求められ、入社すると2日間の研修でこれを学ぶ。

その中に「限られた資金でよりよい成果」という考えがある。これは低価格の商品を提供するための大量製造、持ち運びできるデザインづくり、物流効率の見直しといった全社的な取り組みから、従業員一人ひとりの経費節減にまで及ぶ。その徹底こそがイケアらしさでもある。

たとえば、福岡新宮店を支援するため、イケア・ジャパン本社のある船橋と福岡を飛行機で往復する場合、格安航空会社に限られる。ANAやJALに乗ることはない。宿泊先も一般企業の出張者に比べて、より格安のホテルを選ぶ。