父親の提案

関係が悪化してから約1年後。父親(75歳)から夫を介して上地さんに話があると言われた。ただし、夫の同席を拒否。上地さんは、一方的に罵倒されるのが嫌で拒むと、「言い合う場ではない、考えを話すだけ」と言った舌の根も乾かぬうちに父親は、テーブルをバンバン叩きながら、以下のようなことを述べた。

① あんたたち(母親と上地さん)のせいでこんな二世帯がいがみ合う空気になった。私は前の土地を売ることで、新しい生活を買った。元々土地は売りたくなかったんだ。この恨みをどうするべきか。許せない。必ず仕返しをする。

② あんたたちの思い通りになるような遺言は絶対に書かない。それが嫌なら今まで通りの関係に戻れ。その手助けが必要なら私も手を貸す。このままでいいなら、死ぬまで恨み仕返しをしてやる。私が死んだ後のことは知らない、勝手に骨肉の争いをしろ。

③ 自分はこの家を出る。距離を置くことで関係が改善するかもしれないと思ったから、家を出ることを決めた。引っ越し先の賃貸料を全額もしくは一部出してもらう。

④ 家は出るが荷物は一部置いていく。

⑤ 不満があるなら、ここの家の土地を買った際に自分たちが出した分(○千万円)を買い取れ。

こぶしを握り締め机を叩く男性
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「自ら提案してきた土地の相続(上地さん夫婦が固定資産税を払うことで相続しやすくする)についても破棄する内容でした。やっと母から離れたのに、今度は父の顔色をうかがって生きろと言っているのだと思いました。私の中で母との和解はあり得ません。父は以前、母には精神疾患があると言っていましたが、私が母の相手さえしていれば、自分への害が少ないと思っていたんでしょう。私たちの関係が崩れて、母が自分に文句を言うようになったことで、たまらなくなって私に当たってきたんだと思います」

上地さんは夫のアドバイス通り、何も言わず黙って聞いていたが、最後に父親に言った。

「以前の口約束(土地の相続)はなくなったってことで良いのね? じゃあ、土地の固定資産税は自分で払ってください。私が払う義理はない」

父親の本音は、おそらく「妻と娘の関係を改善させたい」だと思われる。だが上地さんは、「遺産を使って娘の心を思い通りにしようとする時点で、人としても親としてもう無理」と肩を落とした。

このことを夫に伝えると、夫も同様に憤慨し、金輪際、上地さんの両親とは距離を置くことを決めた。