ChatGPTのように端的な言葉を示せる僧侶はいるのか

一方で、こういう見方もできる。「実際の宗教の現場で、上記ChatGPTの回答のように端的かつ分かりやすい言葉を示せる僧侶は、どれだけいるだろうか」。先述のように勉強不足、コミュニケーション下手の僧侶よりは、はるかにChatGPTのほうが上手である。質の悪い僧侶は、AIの登場によって「退場」を迫られることもあり得る時代なのだ。

シンギュラリティ(AIが人間の知能を追い越す)の時代を迎えても、宗教者がAIに取って代わられるのはずっと先だと言われていた。しかし、その足音は着実に大きくなっている。

テキストや音声ベースだけではない。AIによる画像の自動生成アプリも登場している。近い将来、ChatGPTやGoogleやアレクサなどの音声対話を組み合わせた自分のアバターが登場するかもしれない。アバターはデジタル上の自分の分身(「不死」を手に入れた状態に近い)となり得るため、「生」と「死」の境界はあいまいになる。

高台寺が導入したアンドロイドの観音「マインダー」。般若心経の教えを伝える。
撮影=鵜飼秀徳
高台寺が導入したアンドロイドの観音「マインダー」。般若心経の教えを伝える。

「生」と「死」があいまいになる時代の到来は、仏教の基盤、すなわち死を「自分の限界」と位置づけ、「だからこそ、より良い生き方をしなければならない」との教えを揺らがせることにならないか。

これは仏教だけに限らない。常に死の恐怖が存在していたからこそ、多様な宗教が生まれ、存続してきた。宗教は時に、人間の行きすぎた行動を抑制し、倫理や秩序を保つ源泉にもなってきた。

しかし、AIが「死」をあいまいにし、AIが既存の宗教の代役を果たす段階に入ってきている。シンギュラリティの到来が今後、宗教界にどんな影響を与えるのか。技術の進歩は、組織の新旧の入退場を促してきた歴史がある。

100年先、いやもっと早くにAIは「神」や「仏」になり得るのか。その時、社会の倫理は崩壊するのか、新しい秩序がもたらされるのか。それはまだ、誰にも分からない。

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