“教祖”が没し、組織や50万人信者はどうなるのか

宗教法人「幸福の科学」の総裁、大川隆法氏が亡くなり、宗教界に衝撃が走っている。幸福の科学は世界各地におよそ1万もの支部、拠点を構え、国内には50万人程度(公称数は1100万人)の信者がいるといわれる。巨大新宗教のカリスマ教祖亡き後、組織はどうなるのか。戦後勃興した新宗教は、高齢化や二世問題などを抱え、その多くが厳しい組織運営を迫られている。大川氏の死去をきっかけにして、新宗教の勢力図が塗り替えられる可能性もありそうだ。

幸福の科学東京正心館(写真=ハピペディア/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons)
幸福の科学東京正心館(写真=ハピペディア/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

徳島県出身の大川氏は24歳で神の啓示を受け、自身が救世主「エル・カンターレ(地球の至高神)」であることを表明。勤務していた大手総合商社を退社すると、1986年に幸福の科学を設立した。

同教団の最大の特徴は、既存の宗教に依って立っていないところにある。例えば創価学会、立正佼成会、霊友会などは伝統仏教から派生した。1995年に地下鉄サリン事件をおこしたオウム真理教も仏教が根源にある。また、社会問題になっている旧統一教会やエホバの証人などはキリスト教をベースにし、大本やワールドメイトなどは神道からの派生型宗教である。

そうした多くの新宗教と比較すれば、幸福の科学は独自性が強い。幸福の科学はキリスト教やユダヤ教、イスラム教、日本神道の神々、あるいは仏教の諸仏を同一視している。そうした神々・諸仏などの信仰の対象をひとまとめにしたうえで、大川氏はエル・カンターレこそが救済の中心にいる、と定義した。

現在、わが国における新宗教教団は350ほど。人口の1割程度が、新宗教の信者であるとみられている。一部、反社会的な集団「カルト」が潜伏し、人権侵害や不法行為が指摘されている。宗教法人の認可を得ずに、サークルやセミナーと称して勧誘活動を続けるカルト集団も少なくない。

日本には、江戸時代からの檀家制度があり、「ムラ」や「イエ」の宗教が根強く残る。同時に、地域の神社の氏子であったりする。キリスト教は明治以降、布教を試みるものの、現在でも人口の1%程度に留まっているのは「ムラ・イエの宗教=仏教と神道」を切り崩すことができなかった証左といえる。

キリスト教は勢力拡大に失敗したのに、新宗教が勢力を伸ばせたのは、どういうことか。

それは、核家族化の広がりや、ときどきの精神世界ブームに乗じて、凄まじい布教力を推し進めていったからに他ならない。戦後はムラとイエから離れて都会で暮らす若者や、菩提寺をもたない次男以降の家族をターゲットにして、多くの新宗教が勃興した。それを牽引したのが、戦後の精神世界ブームであった。

精神世界ブームをざっと振り返ろう。大きく分けて4回の波があった。