参議院議員の鈴木宗男さんは、選挙カーから身を乗り出す「箱乗り」の遊説スタイルでよく知られている。昨年11月にはバラエティ番組の「ネタ」としても紹介された。鈴木さんは「40年前、初出馬したときからずっと続けている。時に批判を受けてもこのスタイルを貫いたのには理由がある」という――。

初出馬以来40年間続けている

去年の11月、『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)というバラエティ番組で、「鈴木宗男、ハコ乗り最強説」として、私の遊説スタイルが取り上げられました。選挙運動の時、走っている車の助手席から身を乗り出して、沿道の支持者に手を振るのが「箱乗り」。窓枠の上に腰かけて上半身だけ外に出すこともありますが、そこに足を掛けて立ち上がってしまう場合もあります。

車の窓から身を乗り出して手を振る前衆議院議員の鈴木宗男氏(=2004年6月24日、札幌市)
写真=時事通信フォト
翌月の参院選に向けて選挙運動中の鈴木宗男氏(=2004年6月24日、札幌市)

私は昭和58年の初出馬から40年間、選挙のたびに箱乗りを続けています。考えて始めたわけではなく、自然発生的でした。ほかの候補者が、走り過ぎる車の中からチャラチャラ手を振っているのを見ても、何の感動も受けない。「あれじゃダメだ。鈴木宗男のスタイルを作らんといかん」と思った時には、もう身を乗り出していました。

この選挙に賭ける必死さ、本当に命懸けで身体を張ってやっているんですというアピールだからこそ、見る人にグッと迫るんです。箱乗りは伝説の鈴木宗男スタイルになっていますから、ほかの候補者がやっても様になりません。

「そんなものはパフォーマンスだ。選挙では政策を語るべきだ」と批判するのは、政治の本質を知らない人です。党から公認をもらって立候補した以上、訴える政策は決まっています。党が出しているパンフレットを読めばわかるのです。

政治は人です。政治家は、独自にアピールするスタイルや特徴をもっていないとダメです。他の候補者とは違う人間力と情熱を、どれだけ訴えられるかが勝負です。

マイナス20度、時には涙を凍らせながら…

箱乗りは、長いときだと1時間ぐらい続けます。いや、体力的にはきついですよ。一番大事なのは腹筋です。上半身をねじった体勢ですから、筋肉がついていないと腰を痛めます。腕ぢからもないといけません。自分の全体重を、腕に掛けるわけですから。普段から腕立て伏せをしっかりやるとか、鍛えておかないとダメなんです。

私は日頃鍛えているおかげで、結婚式やお葬式に着る略礼服は、47年前に作ったものをいまでも着ています。女房は新しいのを買えと言いますが、体型が変わっていないので、それでじゅうぶんです。

よく対立候補の陣営が、「あれは道路交通法違反でないか」と警察へご注進に及びます。しかしおとがめを受けたことは、1回もありません。道交法は、郵便集配中の集配車や選挙運動中の選挙カーは、シートベルト着用の義務を免除しているんですよ。

危ない思いをしたことも、一切ありません。大事なのは運転手さんとの呼吸です。特に北海道の冬の選挙は、道が凍って滑ります。最初の選挙の最終日はマイナス20度でしたけど、もちろん箱乗りでした。手にはしもやけ。にじんだ涙は、凍りつきます。