なぜ超高級スポーツカーメーカーがSUVを作るのか
2021年、日本国内のSUV販売比率は初めて30%を超え、ミニバンに迫った(軽を除く乗用車)。SUVとは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」のこと。日本人にはピンと来ない名称だが、トヨタ・ハリアーに代表されるボディタイプと言えばわかってもらえるだろうか。
最低地上高(路面とボディ床面との間隔)が大きく、路面の凸凹に強いのが特長だが、近年の主流はクロスオーバーSUVという、舗装路を走ることを主眼にした都会派モデルだ。
日本には、ミニバンというドメスティックな大勢力が存在するので、SUVの販売比率はまだ30%程度だが、欧米ではすでに50%を超え、最もポピュラーな乗用車の形になっている。すでにSUVの中で分化が進み、コンパクトサイズから、超高級スポーツモデルまで、さまざまなタイプが生まれている。
ポルシェの販売の6割がSUV
超高級スポーツSUVの嚆矢は、2002年に誕生したポルシェ・カイエンだ。当時、私を含むカーマニアは、「ポルシェがこんなクルマを出すなんて」と、ネガティブに反応したが、カイエンは世界的に大ヒットし、ポルシェ社の経営を立て直したばかりか、世界有数の超優良企業に成長させた。
2018年には、ランボルギーニがウルスを発表。これまた大ヒットし、ランボルギーニの販売台数を倍増させた。
超高級スポーツカーメーカーにとって、SUVは打ち出の小槌。ポルシェもランボルギーニも、現在ではSUVの販売比率が6割に達している。負けじとアストンマーティンやベントレー、ロールス・ロイスまでもがSUVを開発し、柳の下のどじょうを狙った。
スポーツカーは車高が低くて車内は狭く、ふだん使いには不便だ。対するSUVは乗り降りが楽だし車内も広い。しかもポルシェやランボルギーニなら、メルセデスやBMWといった普通の高級車に比べ、明らかにプレゼンス性が高い。超高級スポーツSUVは、富裕層のふだんの足に最適だった。