中国の最高指導者・習近平とはどんな人物なのか。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「将来を約束されたお坊ちゃんだが、父の失脚で思春期に苦労している。そのため、あえて地方役人からキャリアをスタートして足場を固め、中国のトップまで上り詰めた戦略家だ」という――。

※本稿は、清水克彦『日本有事』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は1日、中国共産党創立100周年祝賀大会で重要演説を行った。=2021年7月1日
写真=中国通信/時事通信フォト
中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2021年7月1日、中国共産党創立100周年祝賀大会で重要演説を行った。

特権と人脈を世襲した「お坊ちゃん」

中国の動きをできる限り正確に予測するには、習近平という最高指導者がいかなる人物なのか把握しておく必要がある。いくつかの点から見ていこう。

レーガン政権からオバマ政権まで国防長官の顧問を務めたアメリカの政治学者、グレアム・アリソンの著書には、若い頃の習近平やその昇進について、次のような記述がある。

――習近平は、やれることは何でもして、トップに這い上がることを決意した。習は、なにより粘り強かった。習は野心的だが控えめで、党の階段を上がる間もひたすら謙虚な姿勢を保ち、最有力候補と目されていた李克強りこくきょうをわずかに抜き、胡錦濤の後継者の座を確実にした――(『米中戦争前夜』〈ダイヤモンド社〉より抜粋)

習近平は、1953年6月15日、中国のほぼ中央に位置する歴史的観光都市、西安で知られる陝西省せんせいしょうで生まれた。父親の習仲勲しゅうちゅうくんは毛沢東の「国共内戦」の同志で、国務院副総理まで務めた人物である。

中国には3大派閥として、江沢民元総書記や唐家璇とうかせん元外交部長で知られる「上海閥」、胡錦濤前総書記や李克強首相が属する「団派」、そして中国共産党最高幹部の子弟から成る「太子党」があるが、習近平は「太子党」に属している。

つまり、世襲的に受け継いだ特権と人脈をもとに、中国の政財界や社交界に大きな影響力を持つことが約束された立場=お坊ちゃんなのである。

10代で洞窟暮らし、農民の下で働く

しかし、北京の名門小学校に通っていた頃、父親が毛沢東から批判され、文化大革命(毛沢東主導による政治闘争)が終わるまで拘束される事態に直面する。

習近平は通っていた中学が閉鎖されると独学で学び、毛沢東の指導によって行われた青少年の地方での徴農(下放)によって陝西省延安市郊外の農村に移り住むと、そこで洞窟を住居とし、堆肥を運び、監督者である農民の命令にきちんと従う生活を過ごしたという。

その後、習近平は、10回目の挑戦で中国共産党に入党を認められ、名門・清華大学を卒業すると、まず人民解放軍を指導する中央軍事委員会の職員となり、軍にコネをつけた。

軍の内部では人事を担当する「政治将校」を務め、組織改革やライバルの排除によって影響力を持つようになった。