※本稿は、清水克彦『日本有事』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
岸田内閣が手にした「黄金の3年間」
2022年7月10日に実施された第26回参議院選挙で、自民党は「日本を守る」など外交・安全保障を選挙公約の柱の1つに掲げ、勝利を収めた。
安倍政権下では、徹底した「憲法改正隠し」「安全保障問題回避」で勝利を重ねてきた自民党が、正面から防衛力の強化を謳い、支持されたことは、それだけ有権者の間に、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した周辺国の脅威が、連日のテレビ報道などによって刷り込まれた結果である。
これで、岸田内閣は衆議院の解散に踏み切らない限り、2025年夏まで本格的な国政選挙がない「黄金の3年間」(やりたい政策を実行に移せる3年間)を得たことになる。
岸田内閣が取り組むべき課題は多々あるが、本書との関連で言えば、何と言っても防衛費の増額であろう。
日本の防衛費は中国の5分の1未満
岸田は、2022年5月23日、アメリカ合衆国大統領に就任して以来、初めて日本を訪れたバイデンと会談し、日本の防衛力を根本的に強化し、その裏づけとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明した。
岸田は、その時点では具体的にいくら増額するとは語らなかったが、国会で議論する前に国際公約をしてしまったことになる。
ただ、現実問題として防衛費を増額し、防衛力を強化することは避けて通れない。
図表1は、2022年版『防衛白書』をもとに、前年度の主要国における防衛にかける予算額を示したものである。
日本の防衛費は中国国防費の5分の1に満たず、欧米諸国などと比較しても、国民1人当たりの費用も少ない。韓国と比較しても3分の1だ。
これでは、サイバー戦や宇宙戦など現代の戦争に太刀打ちできず、中国や北朝鮮が開発してきた極超音速ミサイルや変則的な軌道で飛行する弾道ミサイルを捕捉して迎撃することも難しくなる。