キーワードを拾って的確に質問していく
涙と沈黙が多すぎて、どうなることかと思いましたが、ここで「ヤリマン」というキーワードがでてホッとしました。子どもの頃からの優等生でいなければならない支配や社会的規範から逃れるため、自分を変えるために水商売に就くまでは理解できました。しかし、そこからどうして「ヤリマンみたいになっちゃいました」のか、さっぱりわかりません。キーワードを拾ってピックアップ・クエスチョンでつないでいきます。
「彼氏とか好きな人の前では抑えちゃう。かわいいとかいい女と思われたいから。でもセフレってカラダだけの関係で、そういう相手のほうが大胆になれる。だから悩んでいても悩みを忘れられるし、すごくよかった」
しばらく、会社員とホステスのダブルワークをして、性的に奔放になったことで夜の比重や人間関係が多くなってきます。結局、会社を辞めてしまいました。どうしようと悩んでいるとき、たまたまAV女優募集の広告を目にした、といいます。
「自己否定が強くなりすぎて、思い切ったことをやってみたかっただけ。エッチなことに興味があった。一番は自分を変えたいと思ったこと。親にはとても言えない仕事だけど、私はよかった。自分に自信がもてるようになった。AV女優になって自己否定しなくなりました」
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(WHY?)箱入り娘で親の言いなりの人生。
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(WHY?)ホステスになって世間知らずを自覚。強い自己否定、自己卑下。
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(HOW?)自分を変えたいとAV女優になる。
沈黙があっても慌てず、最後まで聞くことが重要
このケースはキーワードがでる前に相手が泣いてしまって、何度も沈黙が訪れて、どうなることかと思いました。普通の状態ではない相手のペースに100パーセントあわせることによって、語りが再開して、なんとかゴールまでたどり着いています。悪魔の傾聴では、相手が泣いても、沈黙があっても慌てず、あきらめないで、粘り強く最後まで聞いていくことが必要なのです。
相手の沈黙を破らない
キーワードを見逃さないことは伝えましたが、キーワードがでてくるのは語りだけではありません。相手の声の張り、イントネーション、言葉遣い、服装、身だしなみ、視線、表情、呼吸などなど、すべてが情報となります。言葉以外の情報を非言語メッセージといいます。
筆者が非言語メッセージでもっとも重要視するのが、相手の自傷です。自傷があるのは現在、もしくは過去に過度な精神的ストレスがあったということで、見逃してはいけないポイントです。ストレスとは「外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態」のことで、筆者も数々の自傷当事者から聞くまで知らなかったのですが、自分自身を傷つけることはかなり強力なストレス解消になるようです。