世代の異なる人との会話を盛り上げるにはどうすればいいのか。ノンフィクションライターの中村淳彦さんは「相手の話に寄り添うことがきわめて重要。相手が発言した単語を拾い、相づちを打つように短い質問を返す。慣れれば、本当に簡単なことだが、それができない人が少なくない」という――。

※本稿は、中村淳彦『悪魔の傾聴』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

レストランで会話しながら食事をする男女
写真=iStock.com/RRice1981
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会話で絶対にやってはいけない「破壊的な行為」

どんどん本音を引きだす悪魔の傾聴を習得するための前提スキルとして、相手に寄り添う「聞く会話」を身につけていきます。

まず、15~20分程度の初対面の相手との会話において、真っ先に聞き手のポジションをとって相手を主役にしてみます。やることは、相手の興味を聞きながら、相づちを打ち、つなげていくだけです。相手を楽しませるために情報提供することもなければ、盛り上げる必要もありません。相手の話が面白かったら、自分の感覚に任せて笑いましょう。しかし、人と会話するあらゆる場面で絶対にやってはいけないことがあります。

●否定する
●比較する
●自分の話をする

この3つです。これは最重要項目なので、いまこの3行を何度も読み返して覚えてほしいです。会話で絶対にやってはいけない基礎的なことなので、お酒と食べることが好きな会社員女性との会話を想定して悪例を挙げていきます。

ケース1 否定する

【相手】「お洒落な店とか行きたい。けど、会社の帰りとか居酒屋になっちゃいますね」

【自分】「行きたいお洒落な店って、どんなところですか?」

【相手】「たまに行くのは池袋とかかな。会社が近いし」

【自分】「池袋はダメですね。本格的なシェフのいる青山とか麻布まで行かないと」

もっとお洒落な青山とか麻布を薦めたい気持ちがあっても、否定してしまった時点ですべて台無しです。相手のテンションはだだ下がりで、沈黙まで秒読みでしょう。青山とか麻布を薦めたいならば、完全にタイミング違いです。早すぎます。

質問によって池袋の店の話を聞き、もっと新しい店を知りたいという気持ちを確認、タイミングがあればそこで青山や麻布の提案をしてみます。タイミングがなければ、薦めることは断念します。否定は、せっかくの話がすべてダメになる破壊的な行為です。