相手の話をさえぎって自分の話をする40代男性のケース
先日、福祉系のイベントで40代男性と20代女性との、ちょっと痛い会話を見かけました。そのときの風景を悪例として挙げてみます。
【男性】(40代)「知らないなぁ。ハロプロだったらモーニング娘。だよね。俺は安倍なつみとか好きだったなぁ。ハロプロといえば、モーニング娘。だよ」
【女性】(20代)「……安倍なつみさんは名前しか知りません」
せっかく20代女性が「実は……」と自己開示をしたのに、40代男性は一発で話を潰してしまいました。この後、40代男性は00年代のモーニング娘。の話をしていましたが、聞いている女性は上の空です。近くにいた筆者は溜息がもれました。ミスを指摘します。
40代男性の返しはハロプロつながりではあるものの、彼女の話を遮って自分が知る安倍なつみの話にすり替えています。会話は続くはずがありません。20代女性は興味ない00年代のハロプロの話を聞かされ、苦痛な時間を過ごすことになりました。この場面での正解は、「ピックアップ・クエスチョン」を使うことです。この先も何度もでてくる、聞く会話の基本的な技術となります。
会話を進めるために有効な「ピックアップ・クエスチョン」
ピックアップ・クエスチョンとは、すでに相手が発言した単語や主旨を拾い、即時に短い質問を投げかけるテクニックです。自分が聞きたい・知りたい質問ではなく、相手の語りをもっと進めるための質問を投げるのです。
会話の潤滑油として、相手が話したいことに沿って、短く一言の質問を投げます。相手にとってはちゃんと聞いてもらっている確認となり、その話を続けることができます。この場面での40代男性の返答の正解は、「へー、(Juice=Juiceの)ライブはどこでやったの?」
「そうなんだ、(Juice=Juiceの)誰が好きなの?」などになります。相手がすでに発言した言葉をフックにして、短い質問を投げながら、相手の興味関心や話したいことを探っていきます。やってはいけないのは、この40代男性のように、相手の話を自分の知るネタにすり替え、相手の話を潰してしまうことです。
相手の自己開示からはじまったこの場面では、自分の好き嫌い、興味関心は一切関係ありません。とにかく相手が話を継続できる質問を心がけます。この段階では20代女性が、言葉通りにJuice=Juiceの話をしたかったのか、女性アイドル好きな趣向を伝えたかったのか、わかりません。ピックアップ・クエスチョンによって話し手が順調に語れば、いずれ相手がなにを話したいのか見えてきます。