女性コミュニティにおけるハラスメントにはどのような特徴があるのか。産業カウンセラーの川村佳子さんは「『女子ボス』と呼ばれる人が、自己存在の実感を求めるあまりいじめや嫌がらせに走ってしまう。彼女らの中には、最初は優しく接して服従関係に持ち込もうとするタイプもいる」という――。(第1回)

※本稿は、川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

同僚の誕生日を祝う女性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

「女子ボス」による悪質なハラスメントとは

近年、私のカウンセリングルームでも、パワーハラスメント(Power Harassment)の相談が増加傾向にあり、非常に深刻な問題だと受け止めています。

パワーハラスメントは、厚生労働省の定義によれば、

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

とされています。

しかし、ハラスメント(Harassment)自体の定義は、いろいろな場面での「いじめ・嫌がらせ」を意味します。

その種類はさまざまですが、他者に対する発言、行動などが本人の意図には関係なく、「相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」を指します。

ハラスメントは、職場に限ったことではなく、学校やママ友同士、趣味のサークルや地域社会など、いろいろな場面で根強く存在し、大きな社会問題となっています。

特にここ数年、女性から悪質なハラスメントを受けているという相談が続いたことは、私の心のアンテナに長く引っかかっていたことでした。

自己存在を実感するためにいじめや嫌がらせを繰り返す「女子ボス」

私は、自己存在の実感を求めるあまり、ハラスメント(いじめ・嫌がらせ)をしてしまう女子を、「女子ボス」と名付けました。

これは、少し強い言葉かもしれません。皆さんはこの言葉から、どんな人物をイメージするでしょうか?

◎いつも攻撃的な態度で、マウントをとる女子。
◎新人が入ってくるたびに、いじめ続ける女子。
◎同僚なのに、上司面する女子。

3人以上の女子が集まると、リーダー格の女性が生まれます。つまり、その集団の方向性を決める立場の人です。

そのリーダー格の存在が悪いわけではありません。男女を問わず、その集団をより良い方向に導くべく、集団を引っ張っていくうえでは欠かせない存在です。

ただ、リーダーという枠を超え、リーダー自身の考えや望みを最優先にしてしまい、それに逆らう者を追い詰めたり、排除するようなケースが生じる場合があります。そのようなケースは、男性の集団以上に女性の集団に起こりやすい傾向にあります。

「女子の人間関係」のカギを握るキーパーソン。それが「女子ボス」です。

「女子ボス」が誕生した集団には、おおむね「ハラスメント」が蔓延しています。目には見えないですが、女子の人間関係を左右する強力な圧力です。