なぜマウンティングは女性同士で起きやすいのか。今年6月、マウンティングについて書かれた研究論文が話題になった。執筆者でお茶の水女子大学大学院の森裕子さんは「『伝統的な女性としての地位・能力の誇示』『人間としての地位・能力の誇示』『女性としての性的魅力の誇示』の3つが“三すくみ”になるために、マウンティングが繰り返されてしまうのではないか」という――。
3人の女性がカフェでおしゃべり
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「今日もしっかりメイクしてるね」はほめ言葉なのか

「ほめられているみたいだけど、そうじゃない気がする」「そんなことは言ってないのに、なんとなくバカにされたり、下にみられた気がする」……。そんなふうに感じてコミュニケーションがうまくいかず、モヤモヤすることはありませんか? このような、女性同士の関係性の中で、自分の方が立場が上であることを言葉や態度で示す行為は、「マウンティング」と呼ばれます。

私が書いたマウンティングについての研究論文が、先日Twitter上で注目を集め、多くの人々が関心を持つ話題であることが明らかになりました。今回は、マウンティング研究の背景や、その結果明らかとなった女性同士のマウンティングの特徴、さらに今後の研究の展望についてご紹介します。

私は、お茶の水女子大学大学院で心理学を専攻しており、カウンセリングや心理検査を行いながら、日々研究をしています。人々の心の動きと行動に関心を持ち、研究を進める中で、何げない女性同士のコミュニケーションで、モヤモヤする場面に興味を引かれました。

例えば、私はメークをすることが好きなのですが、ある女性に「今日もしっかりメイクをしているね!」と言われたことがあります。その時私は「ほめられているのかな……それともメイクが濃いとか、派手とか、ちょっとネガティブなこと言いたいのかな……?」と勘ぐってしまいました。

相手がどのような意図でこの発言をしたのかは分からないのですが、発言を受けた私は、なんとなくモヤモヤとした気持ちになったのを覚えています。このモヤモヤを友人たちに話すと、「分かる分かる! それはモヤモヤする!」と共感してくれる人もいれば、「それは、ふつうに『メイクしてるね』ってことを言いたいだけじゃない? 考えすぎだよ」と否定され傷つくこともあり、「なんで分かってくれる人と分かってくれない人がいるのだろう」と、モヤモヤはいっそう深まっていきました。