沈黙を恐れて話しすぎてはいけない
突然の涙は、過去に自分を抑え込んでいた負の感情が大きいことが理由でした。聞き手は相手がどんな状況になっても、冷静に状況を判断しながら語りを継続させなければなりません。泣いている理由がわからなければ、「どうして泣いているの?」と率直に問いかけるだけでいいのです。
このケースは涙が先行して、泣いている理由がわかりませんでした。しかし、悲しいことを語りながら泣いてしまうケースもあります。語りと涙が同時進行しているときは、共感しながら聞き続けましょう。言葉が止まってしまったとき、相づちの代わりに「それはツラかったね」みたいな言葉を投げるといいかもしれません。
相手が泣いても、傾聴を止めてはいけない
泣いてしまった人気AV女優は、ふたたび語りはじめてからも、正常な状態ではありませんでした。ずっと泣きながら話していて、なんとか語りはできているものの、呼吸がうまくできなくて頻繁に沈黙が訪れます。
会話をしているときの相手の沈黙は、多くの方々が恐れている状況の一つです。絶対にやってはいけない「否定する」「自分の意見を言う」というミスを犯しての沈黙でないならば、語りの最中に起こる沈黙は、それがいま現在の相手の間になります。聞き手がなにをしても、状況が変わることはありません。相手の沈黙に焦り、慌てて声をかけたり、なにか質問する必要はありません。様子を見ながら進めていきましょう。
親からの支配を脱して水商売の道に
彼女は話の途中で沈黙し、俯むいてしまいました。重苦しい雰囲気ですが、様子を見ます。本人から語りを再開することもあるし、様子を見てから質問すれば返答がある場合もあります。重苦しい雰囲気がなにか気持ちが悪いのは本人も同じであり、そのまま終わることはありません。このときの語りは拙著『ハタチになったら死のうと思ってた』(ミリオン出版)に掲載されています。
「彼に内緒でこっそりホステスをはじめました。夜働いているうちにもっと世の中を知りたいって欲求がでてきて、自分にコンプレックスもどんどん芽生えた。だから結婚の話は進んだけど、自分自身は日が経つほどに迷っちゃった。最終的にまだ結婚はしたくないって別れました」
いままで支配されてきた親を無視して、親が絶対に許さないだろうホステスをやるのは大きな冒険でした。彼氏からのプロポーズを断って、相当な覚悟をもって、その仕事に就いたようです。
「でも、お店では頑張りたかったので、無理して働きました。全然飲めないから、飲んで吐いてみたいな感じで働いた。飲んで、飲んで、吐いてだから、逆流性食道炎を頻繁に起こすようになって。あまり長くは続けられないなって悩むようになって、なんとなくヤリマンみたいになっちゃいました」