まったくそのとおりで、道路損傷度についていえば、乗用車は大型トラックの比ではない。計算上、重量1トンの乗用車と比べて10トン積みのトラックは1万倍も路面を傷める。道路橋にいたっては1テラ倍というとんでもない数値となる。

これまでの調査でも、首都高速道路の主桁に発生する疲労亀裂は主に大型車によって生じることが明らかになっている。さらに国の試算によると、通行台数のわずか0.3%を占める過積載大型車両が道路橋の損傷の91.5%を引き起こしているという。

なぜ、車両重量と道路損傷度についての調査研究がこれほど進んでいるにもかかわらず、ことさらEVの車両重量をやり玉に挙げるのか、極めて不自然と言わざるを得ない。

さらに、そもそも、だ。

車の所有者は車両重量に応じた重量税をすでに支払っている。もし、路面を補修する目的として走行距離税を導入するのであれば、厳密な路面損傷度に見合った車両重量や車種に分類して課税すべきで、その際は重量税の見直しも必要となるだろう。

ガソリン車にも課税か

国沢さんは憤りを見せる一方で、遅くとも2025年には走行距離税が始まると予想する。

「今から侃々諤々かんかんがくがくの議論を行って、始まるのは3年後くらいでしょう。反対する人が大勢いるからすぐには決まらない。ただ、文句を言ったとしても、国は最終的に走行距離税を導入するでしょう。国民もそれを受け入れると思いますよ。苦しいけれど、我慢してしまう国民性ですから」

今後、数十年はガソリン車やハイブリッド車、EVが混在して走ることになるだろう。

先述したように、燃料税は一種の走行距離税である。ガソリン車に対してさらに走行距離税が課せられるのはおかしな話ではないか?

「ですが、EVだけに走行距離税を課したら、今度はEVの普及が進まないでしょう。30年度を目標に13年度比で温室効果ガスの排出を46%減らすというのは日本の国際公約ですから、政府はなんとしてもEVを増やさなければならない。これは脱炭素社会を目指すための一丁目一番地なので、EVの普及に対してブレーキをかけるようなことはできません。なので、走行距離税を始めるのであれば、車種に関わりなく、一律に課すでしょう」

最後に国沢さんは、こう言った。

「走行距離税はみんなが受け入れやすい、低い税額から始めていくと思います。それが徐々に上がっていって、気がついたら『えっ!』となる。だから今、反対しているのです」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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