1960~70年代に活躍したイギリスのバンド「ビートルズ」は、なぜ絶頂期に解散してしまったのか。元国税調査官の大村大次郎さんは「最大の要因は『税金』と『お金の管理』の問題だ。当時、メンバーに課された所得税は95%とされ、税金対策がビートルズの解散の一因になった」という――。

※本稿は、大村大次郎『お金の流れで読み解く ビートルズの栄光と挫折』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

ビートルズのレコードジャケットの数々
写真=iStock.com/Martin Wahlborg
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大活躍したビートルズが解散した根本原因

ビートルズは、前半期には世界の音楽シーンを一新する大活躍をするが、後半期には迷走とも言えるような動きをする。会社をつくって大失敗したり、4人の仲が悪くなったり、最終的にはメンバー間で訴訟さえ起きてしまうのだ。

こうなった最大の要因は「税金」と「お金の管理」の問題なのである。

事業が軌道に乗ったときに、気をつけなくてはならないことが「税金」と「お金の管理」である。とくに事業が急激に拡大した場合、税金というものが非常に重たくのしかかってくる。

ビートルズには「タックスマン」という曲がある。ジョージ・ハリスンがつくった曲であり、次のような歌詞で始まる。どういうふうになっているか説明しましょう

あなたには「1」こちらは「19」で分配されます
なぜなら私は税務署員だから

この曲は、その名の通り、税務署員のことをテーマにしたものだ。もちろん、税金の高さを嘆いたものである。ビートルズの全盛期、イギリスは史上もっとも「金持ちへの課税」が大きかった時代である。所得税の最高税率はなんと95%。

歌詞の中にあるように、20のうち19が税金として取られ、自分たちには1しか残らない。

当時は、東西冷戦の真っただ中であり、まだ世界の人々が共産主義に夢を抱いている時期でもあった。若者の中には、共産主義に傾倒する者も多かった。

そのため、西側の資本主義国も、国内の共産主義運動を抑える目的で、富裕層の課税を強化し、社会保障を充実させようとしていた。だから、このころは西側諸国のどこも富裕層の税金が高かった。日本でも、高額所得者の最高税率は約90%だった。

税金のことを考える暇もないまま高額納税者に…

ビートルズは、デビュー以来、あっという間に高額所得者になった。

デビュー3年目の1965年の時点で、ジョンとポールが400万ドルずつ、ジョージとリンゴは300万ドルずつの資産を持っていたとされている(ジョンとポールは作曲印税があったので、100万ドル多かった)。