50代の就職活動はどのようなものなのか。元銀行員で作家の江上剛さんは「私は49歳でメガバンクを辞め、転職のためにハローワークを訪ねたことがある。『支店長をやっていた私は引く手あまただろう』と考えていたが、職員から『あなたは高くて不味いレストランと同じ』と告げられ、現実を知った」という――。

※本稿は、江上剛『50代の壁』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。

ネクタイを緩めるスーツ姿の男性
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50代は守りに入ると途端に腐り始める

50代になると、人間としてのそれまでの蓄積の差が如実に現れるようになってくる。

人格、教養、財産など、何もかも蓄積がものを言う年齢だが、なかなかそうは問屋が卸さない。

私が言うのだから男性に限るのだが、50代になると、ご飯を食べると、歯の間に食べた物の残りカスが溜まるようになる。

それを爪楊枝でほじり、出てきたカスをじっと見つめ、ペロッと口に入れ、飲み込む。

そしておもむろに茶を飲む。グジュグジュとうがいをしてから飲み干す。

昼食を食べ終わった後、以上の動作を若手女子社員の前でやれば一発で終わりだ。誰も可愛いとは言ってくれない。不潔! と悲鳴をあげられるだろう。

平気でおならをするし、くだらないオヤジギャグで笑わそうとする。カラオケに行けば、やたらとデュエット曲を歌いたがる。

孫のいる人は孫自慢を始めると止まらない。そんな人も妻のことは怖い、厳しいと嘆く。いかに妻に虐待されているか、自虐的に話し、ネタにする。

電車の中で何をやっているかと思えばスマホでギャル漫画を夢中で読んでいたり、ゲームに興じたりしている。これで時代についていっていると誤解している。

若い頃は毅然きぜんとしていたのに、どうして年齢を重ねるにつれて外見がだらしなくなっていくのだろうか。本当は、ナイスミドルと言われる男になっていなくてはならないのに、だんだんと崩れていく。

内面も同じだ。どんどん崩れていく。

まず守りに入る。現在の地位、たいした地位じゃなくても、それを守りたいのだ。

守りに入ると人は内面から腐り始める。