50代にとって最悪の時代=ヘル・フィフティ(地獄の50代)が到来しつつある。作家の江上剛さんは「私が、リストラ対象の50代に言いたいことは1つだけである。『意地を張れ』ということだ。ありていに言えば身勝手に生きろということだ」という――。

※本稿は、江上剛『50代の壁』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。

疲れ果てたサラリーマン
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49歳でメガバンクを退職するという無謀な決断

私がPHP新書『会社人生、五十路の壁』を上梓したのは平成30年(2018年)である。思いがけないほど多くの人に読んでいただくことができた。今回は、それを装いも新たに文庫として読者の皆さんにお届けできることになった。非常に光栄なことであり、幸甚の至りである。

実は、私は『50代の壁』を書いていながらも「五十路」を目前にした49歳で勤務していた銀行を退職し、作家として新しい人生に踏み出した。

タイトルに「会社人生」と謳いながら50代では会社人生を歩んでいない。「看板に偽りあり」との誹りを受けても甘受しないといけないと考える次第である。

言い訳を許していただけるなら、私自身としては50歳になってしまえば新しい人生を歩む決断が鈍ってしまい、辞めるに辞められない事態や立場になってしまうことを懸念したのである。まさに「エイヤ!」の無謀な退職決断だった。

ところで作家と言えば聞こえはいいが、私は芥川賞や直木賞という権威ある文学賞は勿論のこと、それほど有名ではない文学賞も一切獲得していない。世間や出版社などが作家と認めてくれるから作家としてやっていくことができているのである。

だから当初は肩書を「元銀行員」としましょうかとテレビ関係者から言われたことがある。そんな時は意地でも「作家でお願いします」と答えた。作家として生きていく決意の表れと言ったら格好良すぎるだろうか。