学歴や過去の経歴にこだわると心が腐る

別の人の例を話そう。

この人も東大出身だったが、出向先でまったく腰が定まらなかった。

彼はエリート意識が強烈で、銀行員時代、企業との懇親会などに行くとアメリカ留学と東大時代の先輩、同期、後輩などが大蔵省(現・財務省)や日銀でいかに重要な地位に就いているかを必ず話題にした。

その場にいた私は、相手が鼻白む様子がありありだったので、話題を転じようとしたが、彼は話を止めない。とにかく酒宴の最初から最後まで自慢、自慢だった。

きっと彼は役員になれると思っていたのだろう。しかしなれずに企業に出向、転籍した。出向といっても、その先は一流の上場企業だ。破格の待遇だと言ってもいい。

しかし彼には不満だったのだろう。銀行で役員になれなかった自分が許せないのだ。それで相手先企業でも「銀行では」と銀行時代の自慢を繰り返した。1年も持たずにお払い箱になった。その後、幾つかの企業を斡旋された(銀行は温情がある)が、どこもすぐにお払い箱になる始末だった。その後は、銀行の関係会社に勤務していたようだ。

とにかく過去の亡霊、出身大学などにこだわっていると、心が腐る。

心が腐るくらいなら、まだ爪楊枝で歯の間のカスを取り除き、茶でグジュグジュとうがいしている方が無難かもしれない。

会社員が出向、転籍するのは運命だ。まだ出向、転籍先があるだけ幸せと感謝すべきだ。その運命を甘受し、「人間到る処青山あり」の心境で働けば、まったく新しい人生や楽しみが見つかると心得るべきだろう。

成果を上げたからといって必ず出世できるとは限らない

会社員も50代になれば、はっきり出世の明暗が見えてくる。閑職に異動となり、「安定した身分と給料を取り、仕事に喜びを見出せないまま今の会社にしがみつくべきか」、それとも「新たな道へ踏み出すべきか」と悩む人も出てくるだろう。

あなたにものすごい成果があれば、ちょっとした規模の会社なら50代は役員になるかどうかの年齢だよね。でも成果を上げたから役員になれるとは限らない。むしろ嫉妬されたり、警戒心を抱かれたりして出世できないことの方が多いかもしれない。適度に無能で、ゴマをすれる人間が出世するのが世の常だ。私も役員間違いなしと言われた時もあったが、もし銀行に残っていたら、警戒されるなどして役員にはなれず、きっと不満たらたらの人生を送っていただろう。

それはともかく、会社員なら、いずれは閑職への異動や第一線を退くのは当たり前。甘んじて受けるべきです。

そうは言うもののしかし、あなたが同期に比べて圧倒的な成果を上げていて、周囲、特に部下もあなたの出世を望んでいるような状態にもかかわらず閑職に回されたのなら、やっぱり悔しいだろうね。

いっそのことケツをまくって(失礼な表現ですみません)やろうかと思われるのも、これまた当然。

でもねぇ……。よく考えた方がいいなぁ。