小規模な医院や薬局では、「すべての医療機関が23年4月までにマイナ保険証の対応体制を取るのは無理な話で非現実的」「マイナ保険証に対応できないので閉院するしかない」といった悲痛な声が聞こえてくる。

過疎の代表でもある島根県で実施されたアンケートでは、「保険証の原則廃止」に6割の医師が「反対」で、「賛成」は9%に過ぎなかったという。大都市圏でも、同様の調査結果が相次いでいる。

義務化に対する反対は根強い

東京新聞に寄せられた61歳の会社員の投書は、「マイナ保険証」に反発するごく普通の庶民の気持ちを代弁しているようにみえる。

「『マイナンバーカード保険証』の義務化に反対だ、なぜかというと、そうすることのメリットが全く感じられないからだ。……政府の個人情報管理能力は疑わしい。私たちや医療機関に何のメリットもないことを強引に推し進めようとするからには、政府には何らかのメリットがあるはずで、何か利権も絡んでいるのか。こちらにしてみれば個人情報ダダ漏れのリスクがあるだけだ」

ネットでも、「マイナ保険証」に否定的な意見が飛び交う。

「当初は持ち歩いたら危険! とか、他人に見せちゃ駄目! とか、言ってたよね。これからは窓口に診察券と一緒に出すの? どこで変わった‼?」
「国民から健康保険証を取り上げて、情報漏洩不安満載のマイナンバーカードを国民に強制するって、なんのパワハラですか」
「寝たきりの方とか、意思表明ができない方はどうすればいいんだ? 5年で暗証番号変更、10年で写真撮り直しとかってハードル高くないか? 今の健康保険証の方がよほど使いやすい」

などなど。

肯定派は少数だ。

10月半ばに行われた紀尾井町戦略研究所の意識調査でも、「『マイナ保険証』導入による実質的なマイナンバーカードの取得義務化」について、「賛成」は29%に過ぎず、「反対」が43%に上った。

ただ、「マイナ保険証」については、「容認」は29%にとどまったが、「不要」も27%で、「現行保険証とマイナ保険証の併用」が34%に上り、三分された。

一方、「将来的にもカード取得の意思がない」という人が18%と5人に1人もおり、「カード保有は希望者だけでよい」も40%に達した。

こうした動きや数字を見れば、「ほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡る日」は当分、来ることはなさそうだ。

問題の根っこは「政府への不信感」にある

「マイナンバー制度」が国民になかなか受け入れられないのは、政府がメリットだけを強調して、導入の狙いを国民にきちんと伝えていないためだ。

究極の目的は、国民のあらゆる情報の一元的な管理にあるとされるが、その点を積極的に明示しているとは言い難い。むしろ隠しているといってもいいかもしれない。

国会議事堂周辺
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