対象は、個人の収入や資産の財産情報、取引口座などの金融情報、税の取り立てのための税務情報、病歴や投薬履歴の医療情報、学歴をはじめとする教育情報など、個人情報の数々である。

政府は、マイナンバー制度導入の目的について「国民の利便性向上」「行政の効率化」「公正・公平な社会の実現」を挙げている。

ここで、「行政の効率化」とは、行政が国民のあらゆる個人情報を番号だけで把握することであり、「公正・公平な社会の実現」とは税金や社会保険料の徴収漏れをなくすことといえる。

逆に、「国民の利便性向上」は、行政手続きが簡単になる程度でしかない。

つまり、行政ばかりに大きなメリットがある不均衡な制度といえる。

こうした政府の思惑や実態が透けて見えるだけに、個人情報が丸裸にされることに漠然とした不安を感じる人たちのカード取得が進まないのは当然だろう。

その根っこには、「政府は信用できない」という不信感があり、時の政権の都合の良いように個人情報が利用されないかという不安が消えないのだ。

政府と国民の間に、「政府に個人情報の管理を任せてもいい」という基本的な信頼関係が築けていないことが、「マイナンバー制度」の最大の問題といえる。

「突破力」だけでは限界がある

河野氏が、本気で24年秋に「マイナ保険証」の義務化を強行しようとするなら玉砕覚悟の勝算なき闘いになりかねず、単にアドバルーンを揚げて世論の反応を見極めようという意図だったとしたらあまりに稚拙と言わざるを得ない。

マイナンバーカードを自ら取得しようとする人もいないわけではないから、時間をかければ交付率は上がっていったかもしれない。

だが、「任意取得」が基本の「マイナンバー制度」の原則を無視した「河野宣言」は、狙いとは逆の流れをつくりつつある。国民の根強い不信感やデジタル化に対応できない人々を振り切るかのような「マイナ保険証」の推進は危うさだらけで、大きな反発を生んでしまった。

政府関係者は「現行の保険証と『マイナ保険証』を選択できる形にしておけば、これほどの反発はなかったかもしれない」と愚痴る。

河野氏は、国民への丁寧な説明を怠り、省庁間でも十分な調整をしたとはいえず、持ち前の「突破力」だけでは限界があることを浮き彫りにしてしまった。

今や、期待された「突破力」は、想定外の「暴走力」に堕しつつある。

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