日本語学校で多発する人権侵害
今年3月に新型コロナの水際対策が緩和されると、入国待機していた外国人留学生が続々来日した。その数は6月までの4カ月間で11万8207人に達し、同時期に入国した外国人の2割以上に上った。
留学生の多くは、まず日本語学校に入学し、2年程度在籍する。過去2年間、コロナの影響で新入生の受け入れが激減し、軒並み経営難に陥っていた日本語学校は、水際対策緩和によって救われた。
そんな日本語学校業界に9月7日、衝撃が走った。日本語学校を所轄する法務省出入国在留管理庁が、福岡市内の大手校「西日本国際教育学院」に対し、同庁「告示」から抹消する処分を下したのだ。2016年に現行ルールとなって初の処分で、同学院は今後5年間、新入生の受け入れが認められない。
処分の原因となったのが、同学院に在籍していたベトナム人留学生が昨年10月、学校職員に鎖で拘束された問題だ。「鎖」と聞いて驚かれる読者も多いことだろう。だが、外部の目が届きにくい「日本語学校」という空間では、日本人学生には起き得ない人権侵害行為が頻発している。
職員がベトナム人留学生を鎖で拘束
筆者の手元に20秒ほどの短い動画がある。「鎖拘束」の被害に遭ったベトナム人留学生が、拘束時の様子を自撮りしたものだ。
動画では、スーツ姿の職員が太い鎖で自らと留学生のズボンのベルトを鎖でつなぎながら「アハハハッ」と野卑な笑い声を上げ、
「言うまで一緒! 教えて早く! 教えて!」
と、何かを白状するよう迫っている。しかも周囲は誰も止めようとせず、笑い声まで聞かれる。
この動画の存在を初めて報じたのは福岡の地元紙「西日本新聞」だ。昨年12月4日の電子版の<鎖で学生つなぎ波紋 「助けて」投稿、日本語学校釈明「悪ふざけ」>というタイトルの記事である。ただし、留学生本人には取材しておらず、学校名も「福岡市の日本語学校」と伏せてある。