被害者の生々しい証言

私はベトナム人留学生が動画をFacebookにアップした直後の11月初めにコピーを入手し、福岡を訪れて本人や学校関係者への取材をしていた。被害に遭った留学生、チャン・マウ・ホアン君(22歳)はこう話していた。

「鎖には3時間ほどつながれていました。拘束した先生(筆者注:日本語学校の留学生は職員のことも「先生」と呼ぶことが多い)は以前にもベトナム人留学生に怪我をさせたことがあったので、本当に怖かった。必死でスマホを取り出して撮影し、助けを求めてFacebookに載せたのです」

ホアン君は2020年12月に来日し、翌21年1月に西日本国際教育学院に入学した。もともとは20年4月に入学予定だったが、コロナ禍で来日が遅れたのだ。

「福岡」や「西日本国際教育学院」を選んで留学したわけではない。自動車の修理・販売業を営む父親の影響で車に関心があり、「トヨタ」で有名な愛知県の学校を希望したのだという。しかし、ベトナム現地の留学斡旋あっせん業者から紹介されたのは、同学院だけだった。

日本語学校に対する不満と不信

入学当初から、ホアン君は学校に不満を抱いた。

「いちいち届け出ないと寮から外出できず、学校を休むと掃除の罰が待っている。それに、周囲の留学生たちは出稼ぎ目的で、バイトばかりしていて勉強もしないんです」

他校への転校を希望したが、学校は認めてくれなかったという。日本語学校の留学生は、在籍する学校が認めない限り、自由に転校すらできないのだ。

彼は学校に対し、「ベトナムへ帰国する」「(実際には在留資格が「留学」のままであったのに、コロナで帰国困難となった外国人に当時発給されていた「特定活動」に)資格を切り替えた」といった嘘をつくようになった。

一方、学校側は以前から「問題児」とみなしていたホアン君の嘘を疑ったようだ。そして彼を学校へ呼び出し、在留資格の記してある在留カードを見せるよう求めた。

在留カードを見せれば嘘がバレてしまう。「留学」の在留資格を失えば希望の転校ができなくなるため、ホアン君は資格を変更していなかった。そこでカードの提示を拒み、抵抗していると、職員に鎖で拘束されたのだという。