「GPSで管理できる」は大噓
東京五輪に向けた事前合宿のため来日していたウガンダ人の重量挙げ選手が、7月16日、大阪府内の宿舎から失踪し大きなニュースになった。選手は20日に三重県内で発見され、翌21日にはウガンダへ帰国した。
早期に見つかって事なきを得たのは何よりだった。ただし、この事件は、単なる外国人スポーツ選手の失踪という以上の問題をあらわにしている。その点について指摘するメディアは少ない。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、事前合宿中の選手たちは練習場所以外の外出が禁じられていた。また、五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長は、選手やメディアを含め大会関係者の行動をGPSで管理すると表明していた。
しかし、ウガンダ人選手の失踪で、感染防止対策の実効性などまるでないことが証明された格好だ。つまり、第2第3の失踪選手は「いつでも出る」ということだ。
トップレベルの選手でも生活できない現実
このウガンダ人選手は五輪直前に代表を外れ、20日にウガンダへ帰国することになっていた。それを拒み、姿をくらませ、大阪から新幹線で名古屋へ移動した。そこでいったん足取りが途絶えた。
選手は失踪時、宿舎に「ウガンダの生活は厳しいので帰らない。日本で働きたい」とのメモ書きを残していた。つまり、日本での不法就労を目論んでいたのである。
ウガンダは東アフリカに位置し、人口は4400万以上を数える。1人当たりGDP(国民総生産)は年900ドル(約10万円)程度で、アフリカでも最貧国の1つだ。
トップレベルの重量挙げ選手であっても、生活は楽ではなかったのだろう。しかも五輪出場もかなわず、せっかくやってきた日本で働こうとしたようだ。
ニュースに接して、筆者は、東京でも大阪でも、あるいは福岡でも札幌でもなく、「名古屋」へ向かったというのがポイントだ、と感じた。