「不法残留8万人」の衝撃
同選手の失踪は、五輪直前で、しかも新型コロナ感染拡大に対する防止策の不備という点でも、メディアで大きく報じられた。
一方、日本国内には不法残留している外国人が今年1月1日時点で8万3000人近くいる。ウガンダ人選手のニュースの陰では、それだけ多くの外国人が今も不法に滞在し、働いている現実がある。
彼らの多くは貧しいアジアの国から、実習生や留学生として多額の借金を抱えて来日し、ある者はより多くの金を稼ぐため、またある者は学費の支払いを逃れ働こうと不法就労に手を染めている。就労を斡旋するブローカーや雇用主たちに都合よく利用されてのことだ。
今回のウガンダ人選手の失踪問題は、はからずも日本の労働現場の「闇」をつまびらかにしている。
この事件を、アフリカからやって来た一選手の失踪事件に矮小化してはならない。新興国からやってくる若者を不法就労の闇に吸い込む、そんな「ブラックホール」のような仕組みがそこにはある。その事実を、私たちはもっと知るべきなのだ。
今回の事件が、彼らの存在に社会が気づき、そして、若い外国人を不法就労に向かわせるような制度の不備を改めるきっかけになるよう願いたい。