失踪して向かったのがなぜ「名古屋」だったか

ウガンダ人選手が向かった「名古屋」をはじめとする東海地方では、以前から外国人労働者が数多く受け入れられてきた。筆者も、これまで多くの外国人たちを現地で取材してきた。その中には、不法就労者たちが何人もいた。そんな取材経験から、このウガンダ人選手がなんらかのルートで、あらかじめ不法就労の情報を得ていた可能性がある、と思った。

まず、日本における外国人の不法就労の実態について少し触れてみよう。

昨年、入管当局に不法就労が発覚し、母国へ強制送還となった外国人の数は1万993人に上った。コロナ禍の影響で新規入国する外国人が激減し、前年から2000人近く減少した。ただし、2017年までは1万人以下で推移していたので、依然として高水準だといえる。

国籍別ではベトナム人が4943人で、全体の半数近くを占めた。次に多いのが中国人の2361人で、タイ人、インドネシア人、フィリピン人という上位5カ国を合わせると9割以上に達する。

不法就労していた都道府県は、1512人の茨城県が最も多い。続いて千葉県が1488人、ウガンダ人選手が新幹線を降りた愛知県は1452人で3番目である。また、この選手が見つかった三重県では、11番目に多い160人の不法就労があった。

職種別では、農業が2463人、建設作業が2272人、工場などでの工員が2033人だった。茨城や千葉では農業、愛知の場合は建設作業での就労が最多となっている。

外国人が不法就労を目指すワケ

外国人の不法就労に関し、新聞やテレビでは職場から失踪した技能実習生たちがよく取り上げられる。実習生の手取り賃金は月10万円少々にすぎない。そのため失踪し、不法就労に走る。実習生でいるよりも、不法就労したほうが稼げるからだ。

出稼ぎ目的の留学生が、日本語学校などの学費の支払いを逃れて働こうと、学校から姿をくらまし不法就労することも少なくない。加えて、観光客を装い入国し、不法就労するケースもある。

これまで筆者が取材してきた不法就労者も、実習生か留学生、もしくは観光客として来日した外国人だった。そして彼らが働く場所は、愛知県など東海地方が多かった。