入管庁の「甘さ」で日本語学校はやりたい放題

「鎖拘束」問題に関し、私は『週刊新潮』2月10日号に寄稿した。ホアン君に加え、西日本国際教育学院や宮田学園の実名も記してのことだ。

その際、入管庁にも見解を問うた。同庁は「個別の事案には回答を差し控える」と断りつつ、「鎖拘束」には「事実関係を確認した上で適切な対応を行う」と答える一方、内部進学の強要等は「日本語教育機関の告示基準第2条第1項第8号〈抹消の基準〉に該当する」と認めた。

「告示基準」とは、入管庁が日本語学校に対して定める規則で、違反すれば「告示」から抹消され、留学生の受け入れが禁じられかねない。

私は取材を通じ、日本語学校による「告示基準違反」の具体例を数多く目の当たりにしてきた。入管庁とも何度となくやりとりしてきたが、対応はいつも同じだった。一般論でしか答えず、「必要があれば調査する」という態度なのである。

いくら明確な証拠を突き付けようとも、学校の処分はなされない。こうした入管庁の甘さが影響し、日本語学校のやりたい放題がまかり通っている。

国会で法務大臣を追及

今回の「鎖拘束」問題でも、入管庁が動く気配はなかった。そこで私は、問題に関心を示してくれた市村浩一郎・衆議院議員(日本維新の会)に相談した。

すると市村氏が、4月22日の衆院法務委員会で古川禎久法務大臣(当時)に質問してくれるという。大臣による国会答弁は、入管庁の担当者が私の取材に回答するのとは重みがまったく違う。

市村氏には日本語学校の「告示基準違反」として、3件の事例を取り上げてもらった。「鎖拘束」に加え、宇都宮市の大手校がベトナム人留学生に対し、進学や就職に必要な書類の発行を拒み、系列の専門学校への内部進学を強要していたケース、そして仙台市の学校が、やはりベトナム人留学生に課していた不当な「賠償金」の問題だ。いずれも私が取材した具体例である。

仙台の問題を少し説明すると、この学校では、中途退学して就職すれば300万円もの「賠償金」を請求するという誓約書を作成し、留学生たちに署名させていた。しかも入学金を納めた後に署名を求めるという悪質さなのだ。また、大学進学を条件に30万円程度の「保証金」まで徴収していた。内部進学の強要と同様、留学生の進路選択の自由を侵す行為にほかならない。

西日本国際教育学院の「鎖拘束」は突発的に起きた問題だが、仙台や宇都宮のケースは構造的で、よりタチが悪いともいえる。しかも、両件とも被害に遭った留学生は地元の入管当局に助けを求めたが、何ら対処もしてはもらえなかった。