河野大臣は「保険証を廃止する」と宣言したが…

河野太郎デジタル相のウリである「突破力」とは、どうやら「暴走力」のことのようらしい。

「デジタル社会のパスポート」と政府が喧伝するマイナンバーカードを国民に行き渡らせるため、河野氏が勇んで打ち上げた「マイナ保険証」の義務化宣言に、早くも暗雲が漂い始めたのだ。

参院予算委員会で答弁する河野太郎デジタル相(右手前)。左端は岸田文雄首相=2022年10月20日、国会内
写真=時事通信フォト
参院予算委員会で答弁する河野太郎デジタル相(右手前)。左端は岸田文雄首相=2022年10月20日、国会内

河野氏は10月13日、現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると宣言した。

国民皆保険制度を採る日本では、すべての国民にカードの取得を「強制」することを意味する。カードの取得は法的に「任意」であるにもかかわらず、医療機関の受診に欠かせない保険証を「人質」にとって、強権的にマイナンバーカードを取得させようというのだ。

普及が進まないマイナンバーカードをめぐって、政府は、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、現行の健康保険証を24年度以降に「原則廃止」する方針を盛り込んだが、具体的な時期までは決めていなかった。

国民の反発や医療現場の混乱を考慮しての努力目標ともいえたが、「河野宣言」は、こうした難題を一顧だにせず、「原則廃止」の「原則」を外し「期限」も24年秋と区切った。

8月の内閣改造で就任した河野氏は、岸田文雄首相に「骨太の方針」の具体化を指示され、腰の重い厚生労働省の尻をたたき、現行の健康保険証廃止の早期実現を強く迫ったという。

「マイナンバーカードを、少しでも早く、すべての国民に持たせたい」という政府の願望を、強硬策で実現しようというわけだ。

「マイナ保険証」を取得しない人への対策は一切説明せず、カードの「普及ありき」の前のめりの姿勢だけが強く印象づけられた。

ある政府関係者は、河野氏の「突破力」が存分に発揮されたと解説する。