消費者物価指数は上昇しなかったのはなぜか

なぜこんなに景気が過熱したのに、消費者物価指数は上昇しなかったのか?

答えは為替です。1984年末に251円58銭だったドル/円が、1989年末には143円40銭。1990年末には135円40銭まで円高が進みました。毎年30円、40円もの円高/ドル安が進んだのです。自国通貨が強くなるのは、強いデフレ要因です。

輸入インフレとは、自国通貨が安くなると輸入品価格が上昇することで起こります。逆に円高では、輸入品が安くなり、国内物価も引きずられて下がります。

重要なことは、日本のバブル経済時は資産インフレという強烈なインフレ要因を、円高という超デフレ要因が相殺したという点です。だからこそ消費者物価指数が今の日銀の目標である2%より低いままで、いわば「狂乱経済」とも言うべき様相をていしていたのです。

米国の不動産価格は高騰、株価は最高値圏…

現在の米国は、バブル経済時の日本ととても似ています。実際、そのような状態であることを的確に表す記事が2022年3月24日の日経新聞に出ていました。

「FRBのウォラー理事は24日、住宅市場について講演し、『ここワシントンで家を買おうとしているのでわかるが、市場はクレージーだ』と語った」そうなのです。私がここ米国でアパートの賃料値上げ率に、まいったのと同じです。ウォラー理事がご自身で家を買おうとしているからこそ、強く理解できるのだと思います。

ウォラー理事が感じたように、米国の資産価格はバブルと言わないまでも、かなり高騰しています。日本のバブル経済時と同じです。不動産の値上がりが激しく、株価は史上最高値圏です。日経平均も1989年12月の3万8915円が史上最高値だったことは、すでに述べた通りです。

史上最高値とは、一般論で言えば、株で皆が儲かっているということです。もちろん例外はあるでしょうが。

ルーズベルト島から見るマンハッタン東側のビル群
写真=iStock.com/Renata Tyburczy
※写真はイメージです

FRBは「資産効果」を軽視している

米国は日本よりも株に投資することが社会に浸透していて、多くの米国民が株を保有しています。ですから「資産効果」は、当時の日本以上に国民に影響します。資産効果とは、株や土地を持っている人が自分が金持ちになったつもりになり、消費を増やすことです。

当時の日本では「シーマ現象」という言葉がはやっていました。当時の日産自動車の最高級車シーマがバカ売れしたのです。

そのバカ売れを投資家が見て、日産の株をさらに買い増す。

車がバカ売れするので日産の社員の給料・ボーナスは上がるし、日産の株を持っていた投資家は儲かった気分になり、さらに消費を増やす、という好循環です。これが日本のバブル経済だったわけですが、その現象が、まさに今米国で起きていると思うのです。

この資産効果の威力のすごさに、FRBは目を向けていないように思います。