実質金利とは、名目金利からインフレ率を引いたもので、実質金利が高いと景気を冷やし、実質金利が低いと景気を刺激するというわけです。しかし、消費者物価指数を使って日本のバブル経済のときの実質金利を計算した場合、あの狂乱経済をうまく説明できないのです。
コールレートとは、当時の日銀の政策金利(中央銀行が市場金利を誘導するためのレート)で銀行間の1日の貸借のレートのことですが、当時のコールレートは1985年は7.875%、86年は4.4375%、87年は4.0000%、88年は4.125%、89年は6.5%と極めて高かったのです。
ちなみに、政策金利は時代により、いろいろと変遷します。昔の日本では政策金利が公定歩合でした。それが変化して、最近まで1日の銀行間の貸借レートが政策金利になっていました。
1日の銀行間の貸借レートを日本では「コールレート」、米国では「FFレート」(FED FUNDSレート)といいます。日米ともこれが政策金利でしたが、日銀は(これ自体が異常ですが)長期金利も政策金利に加えました。
このままでは「日本のバブル」の失敗が繰り返される
一方、バブル経済時の消費者物価指数は極めて低く、0.5%前後。これだと1986年で4.4375%(コールレート)-0.5%=3.9375%と、実質金利はかなり高いことになります。そんなに高い実質レートでは、狂乱経済になるわけがないのです。
あの頃、私が主張していたのは、実質金利を計算するときに、消費者物価指数を使うのはまずいのではないか、ということです。土地や資産の価格上昇率を使わなければ、金融政策を間違えるということを言っていたのです。
「名目金利-x」のxに「資産価格の上昇率」を使えば、実質金利はかなりのマイナスになり、狂乱経済を説明できるという主張でした。誰も耳を傾けてくれませんでしたが(苦笑)。
以上のように、FRBには日本のバブルから学ぶべきことがたくさんあると思っていますが、それらが生かされていないのは残念なことです。
逆に言うと、サマーズ氏が述べているように、FRBの引き締めの遅れが大変な事態を招くと私は思っているのです。