日本の観光業を復興するためには何をするべきか。元日本マイクロソフト社長の成毛眞さんは「まずは1泊1人10万円の宿泊施設を増やすべきだ。日本に相当数いるそこそこの富裕層を狙えば観光地は復興できるはずだ」という。冨山和彦さんとの共著『2025年日本経済再生戦略』(SBクリエイティブ)より一部をお届けする――。(第4回)
ホテルのスイートルーム
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日本人富裕層向けの観光施設をつくれ

【成毛眞】日本のすべての産業について再生の詳細を語り尽くすのは無理なので、最近思うところがある観光業について、1つの切り口を示してみよう。

私が仕事場を置いている熱海では、現時点(2021年10月)で着工中のホテル・旅館が17軒もある。

「コロナ禍でインバウンド需要が消滅しているなかで、なぜ?」と思うかもしれない。だが、地元で聞くところによると、熱海の大半の観光業者は、実はもともとインバウンドをアテにしていないのだそうだ。

そういえば確かに、コロナ禍の前から、街を歩いていても、ほとんど外国人観光客を見かけたことがない。

パンデミックの収束に伴ってインバウンドが以前の水準に戻るかどうかは、熱海にはあまり関係ないのである。それよりも、「インバウンドなしの観光復興」がやってくることを見越して、着工ラッシュになっているというわけだろう。

そこで鍵となるのは、日本人富裕層向けの観光業だと思う。

欧米には、ユースホステル並みの低価格の宿泊施設もあれば、3泊4日で120万円といった、とんでもない価格の部屋を設けている超高級ホテルもある。懐具合や目的によって使い分けられるようになっているのだ。

ところが、日本では後者のたぐいの高級施設が圧倒的に不足しているのである。