なぜ日本経済は低迷から抜け出せないのか。元日本マイクロソフト社長の成毛眞さんは「日本の証券取引所の規則は昭和のままだから、どんな身軽なスタートアップも上場すると昭和的体質になってしまう」という。冨山和彦さんとの共著『2025年日本経済再生戦略』(SBクリエイティブ)より一部をお届けする――。(第3回)
屋上で横たわる男性
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日本の上場企業の昭和的体質に現場は困っている

日本はもう、いい加減に昭和的価値観から脱却しなくてはいけない。特に昭和型企業はすぐにでも改革に手を付けなくては手遅れになる。

いかに昭和型企業が社会的害悪となっているか。悪例はいくつもあるが、目に余る昭和型企業、東芝を取り上げる。

東芝は、所得隠しや粉飾決算など以前から数々の不祥事を起こしてきたが、2021年に判明した不祥事は特筆すべきものだった。2020年の株主総会において、東芝は経産省と結託し、外国株主(シンガポールのエフィッシモと3D、アメリカのHMC=ハーバード大学基金運用ファンド)の株主提案権や議決権を阻害しようと画策したというのだ。

東芝側の根本的な目論見は、これらの株主に解任されそうになった社長の保身のために経産省を利用しようというところにある。そこを経産省は見抜けなかったというバカげた話ではあるのだが、世間の耳目を集め、巨大企業の転落ここに極まるの感があった。

東芝だけではない。日本は多かれ少なかれ昭和的なものを引きずる企業だらけである。

たとえば私は企業から講演などを頼まれることもあるが、業務委託契約書やら請求書やら、書類の提出をやたらと求められるのだ。面倒なので講演を即刻断る。

なかには断り切れない大企業からの依頼もあったが、打ち合わせ時に「自家用車で来るのか、タクシーで来るのか」でメールを3往復したところで堪忍袋の緒が切れ、断った。

某出版社では一定額以上の印税支払いにあたって、請求書を提出してほしいという。呆れ果てて苦言を呈したら、実は担当編集者も編集長も前々から困っていたということが判明した。結局、社内で問題となって、請求書は全面的に不要になった。

要するに各社とも管理部門が昭和のままであり、現場は困っているのだ。

その点、実は中央省庁のほうが手軽だ。せいぜいその場での領収書だけで済んでしまう。

そこで、これは「日本の上場企業特有の昭和的体質」なのではないかということに、はたと気づいた。